パイルD3

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのパイルD3のレビュー・感想・評価

3.5

ジェーンとは誰…?
誰かは途中で明かされるのですが、この“女性たちの〜“というサブタイトルは不要ですね。観ていれば誰でもわかる事を先回りしてお節介で表示するのはいかがなものかと…。

人工中絶という難題にぶつかった時、女性は何を選択するか?男はどんな言動をするか?
それぞれの状況によって解答はすべて異なるであろう究極の選択と、意志の持ち方についてのヒントを提示する作品。  

この作品も、特定の人物をモデルにしているわけでは無いが、事実を元にしているらしい。

【コール•ジェーン 女性たちの秘密の電話】

1960年代後半から70年代初頭、ベトナム戦争への反戦運動が激化していた時代。
“私はニクソンに投票した“というセリフが出てきたように、リンドン•ジョンソンからニクソン政権へと移行する当時のアメリカは、中絶が法的に禁止されていて、夫婦に子供が出来たら絶対堕すことは許されなかったという。

妊娠した主人公(エリザベス•バンクス)が、医者から妊娠によって持病の心臓病が進行しているから、産んだらあんたも死ぬかも知れないよ、と言われたことから人工中絶を希望するが、病院の年輩男性しかいない医師会ではダメと決定されてしまう。
自分の命の危機から、やむなく違法の中絶手段を探り始めて、試行錯誤の挙句、たまたま1枚の貼り紙に目が行き…というストーリー。

当時の手術法は掻爬手術が主流だったせいか、術後の死亡率が高かったようで、ますます女性の身も心も完全に守り抜く世界的なルールが必要だと思えてくる。

主人公が口にする“同一賃金“という一言が、現在に通じる女性の社会的地位や、自由への大切なメッセージとなっていた。


【地下組織】 

シカゴの女性解放同盟のアンダーグラウンド•ネットワークとして存在していた堕胎のサポート集団は実在したらしく、今も同じ名前で存続しているという。
日本なら駆け込み寺に近いと思うが、民間の人道的なセフティーネットと言えるかも知れない。

【中絶問題を描いた作品群の件】

堕胎をテーマにした映画は、重苦しくシビアな内容ながらも重要な作品が多い。

1950年代の中絶が法律で禁止されていたイギリスの下町を舞台にした「ヴェラ•ドレイク」、第二次大戦期のナチス占領下のフランスで堕胎を仕事にし始めた女性の過酷な人生を描く「主婦マリーがしたこと」、中絶を禁じるチャウシェスク政権下のルーマニアで、妊娠してしまった友達の闇中絶を必死で手助けするルームメイトの姿が痛ましい「4ヶ月、3週と2日」、マイケル•ケインが孤児院の堕胎医を演じた秀作「サイダーハウス•ルール」等々、いずれも女性だけではなく、中絶に関わる人々の人間としてのあり方にフォーカスしている。

【今現在…】

アメリカでは何とケンタッキーなど14州で、中絶禁止の法律が復活したという。

今の日本も少子化政策の一部としか思えないが、文科省経由で学校での避妊などの性教育廃止へと舵を切り始めているらしい。
誰がこんなことを思いつくんだろう?
現時点では、明確な理由は明かされていないので、ほとんどの国民が知らない事だ。

…となると、次に打ち出してくるのは当然…
と、推察してしまう。
そんな事に思いを巡らし、自分たちの未来社会の事を考えるきっかけになる作品かもしれない。

【シーガニー!】

シーガニー•ウィーバーが堂々とした存在感で、とにかく気持ちがいい。
当初、スーザン•サランドンとエリザベス•モスがキャスティング候補だったらしい。
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