とぶとかげ

わが青春つきるとも 伊藤千代子の生涯のとぶとかげのレビュー・感想・評価

3.0
映画としてはう~ん、まあ…って感じ。脚本(セリフ)も演技(演出)も生硬な感じで、プロパガンダ映画、いや、プロパガンダ演劇みたいだった。実際、映画のテーマは明確で、たとえ主人公の政治的主張(天皇制廃止とか)には賛同しないという人にしても「一生懸命働いても働いても貧乏から抜け出せず、人が人らしく生きられない社会はおかしい」という言葉には頷けることだろう。この点だけではなく、この映画は素材的には現代日本と地続きの問題が次々と出てくるのだが、それが現代社会へのメッセージとしてうまく生かされていたとはあまり思えなかった。しかも時代的に仕方ないとは思うが、たとえより良い社会を目指しているという男性や組織であっても家父長制や権威主義的な面が見え隠れしてちょっとウンザリする場面もあったし。要は素材は悪くないのにもったいない…って感じ。そういう意味ではちゃんと劇映画として面白かった「福田村事件」はやはり凄かったんだなあ、と改めて思いました。