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X エックスのkanacoのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
3.6
己の夢に向かいギラつく野心的な若者たちが田舎の一軒家で襲われるスラッシャーホラー。「老い」と「若さ」の対比から成るテーマ性や王道路線の中に新しさも入れ込むトリッキーな展開が意外とオシャレかも。ホラーアイコンの怪老婆パールという存在がどういうキラーであるか考えるのが楽しかったかも🤔(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
「私らしくない人生は受け入れない」マキシーンは自分の理想の人生を手に入れるために強い向上心を持つ女優の卵である。夢を叶える一歩として自主製作のポルノ映画を撮影するため、マキシーンは恋人のプロデューサー、監督兼カメラマンの学生、録音担当の女の子、女優と男優1人ずつと共にテキサスの田舎にある農場を訪れた。そこに住んでいたのは老夫婦。老人ハワードに借りる約束になっていた納屋へと案内された彼らは「ポルノ映画」でありながらそのジャンルを超えるようなヒット作を撮るという野心を燃やし撮影を始める。そんな中、マキシーンは窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目があってしまう……。その様子はどこかおかしく…。

❶己の夢に向かってギラつく野心的な若者たちが襲われるスラッシャーホラー

映画撮影のためにテキサスに訪れた3組のカップルが、そこに住む怪しい老夫婦に襲われるというスラッシャーホラーです。〈田舎に偶然に立ち寄った、性に奔放な若者たちが辿りついた場所が殺人鬼のいる場所だった〉という古典的なスラッシャー映画をベースに〈若さ〉VS〈老い〉というテーマと〈(物理的に)モンスターではないキラー〉を盛り込むことで王道路線に新しさを吹き込むような感じがしました。

若者たちは従来の〈将来を軽んじて「今」を楽しむようなキャラクター〉ではなく、みな野心的で己の夢のためにギラギラしています。女優を目指している主人公のマキシーンも「私らしくない人生は受け入れない」という強い信念を持つ若い娘。撮影チームの若者たちは芸術性をも持つ〈ポルノ映画〉を撮って一山当てることに意欲的で楽しむためだけの性ではなく〈ただの手段〉として性をドライかつ奔放に撮影していきます。

そんな若者たちと対するのは、彼らに撮影場所を貸した少々みすぼらしい老夫婦。第二次世界大戦に従軍した退役軍人だというハワードと、若い頃はダンサーをしていたらしいパールです。

前半1時間くらいは撮影チームが「ポルノ映画」を撮影する様子が延々と流れるので、途中に何回か匂わせホラーギミックが挟まれるとはいえ「私何を見ているのだっけ?🤔」と思ってしまうほど。スラッシャー映画として機能するのは後半から。58分経過した辺りからはスピード展開。殺人老人夫婦がやっと大暴れです🤣

ちなみにちゃんとグロくはあるのですが、殺戮は意外とズバズバ思い切りよくいくので、見ていて共感性ある痛みはそんなに響いてきません(助かった)。音楽や色味…特にパールを象徴するような鮮烈な〈赤〉にこだわりを感じスタイリッシュさえ感じます。前半も含め、全てを見終わると伏線や映像の撮り方、音楽のチョイスなども含め丁寧に作られていると感じました。

❷怪老婆パールという〈嫉妬〉〈自己顕示欲〉に溢れた強烈なキラー

映画のインパクトは〈性欲の権化のような老女キラー〉の不気味さや恐ろしさに集中している印象を受けましたし、見る前もそういう映画なのだと思って見始めました。ですが、個人的には絵の機能はとにかく、終盤になるまでイマイチこの〈性欲の権化のような老女キラー〉の設定が飲み込めませんでした。

老婆パールが若い男を殺してもそれに何かするわけでもないのが疑問で🤔それどころか死体なんて気にとめず自己陶酔的に踊り出しちゃうし。私が当初に思っていたより老婆は〈性の快楽を突き詰めたいキラー〉というわけではないのかな?と不思議に…。かと言って若者を何かのプロパガンダを持って〈粛清〉しているような気もあまりせず…。んん??と疑問に。

結局パールは〈性欲〉のキラーという私の思い込み認識は相違で〈嫉妬〉と〈自己顕示欲〉のキラーだったのかな、ということに落ち着きました。誘うのも自分に魅力があると切望するから起こす行動なのかなぁ。老夫婦と若者たちが明確に対比されるのは当然〈老い〉と〈若さ〉。つまり目的に向かってギラギラした目で未来を掴み取ろうとする、これから何でもなるチャンスを持つ〈未来に開く〉若者たちと、〈過去に開かなかった〉未来が閉じた老人たち。マキシーンの「私らしくない人生は受け入れない」という彼女が何度も唱える指針は、過去はダンサーであった若いパールも唱えていたのかも。

それはとても人間的な〈サイコパスに到る思考〉に思えて、それ故にパール、そしてハワードがほとんどのスラッシャーキラーが成る半モンスター的な存在ではなく、あくまで〈人間〉のサイコパスキラーとしてその生涯を終えることも納得です。

パールに〈性欲〉が被せられたのはあくまで〈ホラー〉として強烈なインパクトを持たせるためのキャラ付けと絵的な演出、またスラッシャー映画のオーソドックスを壊すための1つのギミックという側面が強いのかな…と最期まで見てやっと納得しました。「シンプルにパールが〈性欲の権化のような老女キラー〉として見るなら露悪感があってつまらなかったかもだけど、違うのなら前半のポルノ映画撮影シーンも意味は分かるし、スラッシャーホラーの中では撮り方がオシャレな部類だったし、面白かったかも」と思った作品でした。

とか言って、全然違ったりして。
さて、『パール』みーよう!!୧( ˃◡˂ )୨💕

あと、ハワードはそれで死ぬのかい!はちょっと意表を突かれちゃった🤣

✨🐝「ファッションですが、マキシーンを演じるミア・ゴスさんの裸×サロペットがセクシーで可愛かったです。私が20代前半くらいの時に露出の激しい服装について「胸なんて大抵は若い時しか出せないのだから、出したいなら今出しとくべき」ってアドバイスされたことを思い出しました🤣」
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