三四郎

むすめの三四郎のレビュー・感想・評価

むすめ(1943年製作の映画)
4.7
ミシンをする高峰三枝子の顔アップから始まる映画!
電車の座席で熱心に本を読んでいる上原謙。目の前には洋装姿で風呂敷を持った高峰三枝子。そこに60代くらいの大きな買物袋を持ったお婆さんが乗ってくる。
しかし、上原謙は気づかず、本に夢中で席を譲ろうとしない。見兼ねた高峰三枝子は、上原謙の足をチョイと蹴ってみたり、踏んづけてみたり笑
「なんです!?」と顔を上げ睨んだ上原謙だったが、大きな買物袋を抱えたお婆さんを見て、状況を察し席を譲る。隣同士でつり革を持つことになった高峰三枝子と上原謙。上原謙は高峰三枝子に仕返しをしようと、ヒールを蹴ろうとするが避けられ、踏んづけようとすると、お婆さんの足を踏んづけてしまう笑
そんなコメディタッチの出逢いから始まる美男美女の恋愛模様。
この時のお婆さんが、実はメリヤス工場の女将さんで、高峰三枝子に惚れ込み、息子との縁談を持って来たのだ。

虫歯のできた高峰三枝子が歯医者に行くと、そこの先生が上原謙で、顔があった瞬間、高峰三枝子が後ずさりし帰ろうとするところが微笑ましい。
高峰三枝子の幼馴染である三浦光子は虫歯がなくとも歯医者へ通うほど、上原謙に惚れている。
その後、高峰三枝子と上原謙は親しくなり両想いとなるが…、そんな娘の恋心を全く知らない父親河村黎吉は、娘高峰三枝子にメリヤス工場の息子との縁談を勧める。
娘は最初は嫌がるが、「お父さんが喜ぶなら、お父さんの好きにして良いわ」と暗い顔で承諾。何も知らない父親は「良かった良かった!こんな良い話はない」と喜ぶ。

しかし、結納を交わすその日、上原謙に惚れ込んでいた幼馴染の三浦光子が高峰三枝子と上原謙の想いを察知し、自分の恋は諦め、幼馴染の為に奔走する!仲人役だった母親飯田蝶子と父親坂本武に泣きながら幼馴染の高峰三枝子が可哀想だと訴える。話の流れで、娘の三浦光子も上原謙が好きだったことを知り、飯田蝶子は、じゃあ良かったじゃないか笑 メリヤス工場の若旦那と高峰三枝子が結婚し、上原謙と三浦光子が結婚すれば!と、楽天的なことを言うが、三浦光子は、「お母さんも女だからわかるでしょ女心が!幼馴染の為なら身を引くわ!」と言い張る。三浦光子はあまりにも良い娘だった!
と言うわけで、三浦光子の父親坂本武は、河村黎吉・高峰三枝子の親娘の家に行き、父親河村黎吉に事情を知らせる。
三浦光子の母親飯田蝶子は、メリヤス工場の旦那と女将さんのところへ縁談をぶち壊しにいく!怒るメリヤス工場の旦那さんが「時代が時代なら、仲人をした御宅の旦那さんは切腹もんですぞ!」と言えば、飯田蝶子は「いや、そうなんですよ!だからウチの主人とも 『時代が時代じゃなくって良かった』って話してたんですよ!」笑笑

ハッピーエンドの大船調コメディは愉快愉快!
映画館の客席でも至る所で笑いが起きる、そんな映画だった。
旧い映画にしては、キズや雨も少なく、画質も良好で、当時の日本を代表する大スター上原謙と高峰三枝子の美男美女ぶりを拝める。

日本が追い込まれ始めた1943年に、こんなコメディタッチの愛おしい作品を撮った大庭秀雄監督、松竹大船の脚本家、プロデューサーは偉かった。
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