シガーandシュガー

ポスト・モーテム 遺体写真家トーマスのシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

第一次世界大戦の戦場で一命をとりとめたトーマスが、戦後「生きている人のように遺体の肖像写真をとる」仕事につき、とある村へやってくる。
そこにいた少女は、トーマスが死にかけた時に幻で見た少女だった。
トーマスは遺体写真をとるべく村にとどまるが、超常現象や村民の不可解な死が続き、霊の存在を強く疑いはじめる。

全体的に色味も映像も抑え気味で、戦争と病(スペイン風邪)に苦しむ村民の生活が感じられる。トーマスと少女アナはどちらも一度死にかけた身であることから霊に呼応しやすい存在となっているのか、二人で霊の存在を確認しようと自然にコンビを組む流れは好ましかった。トーマスはあまり感情的にならないし、アナの気持ちの揺れもそっと受け止める度量の広さも、不可思議な現象に向き合おうとする理性もあって地味にいい男。ただ、アナとは恋愛感情のようなものは感じられず、兄弟のような絆を結んでいるようにみえるところもいい。

霊の存在が写真に収まっていること、声も録音できることなど、実証されていくところは面白い。これによって二人は霊が何かを望んでいるらしいことを察し霊ののぞみを叶えることで祓おうとするが、クライマックスでトーマスが強く霊に見込まれるところも(トーマスの)存在理由がはっきりしていてよかった。冒頭にあるトーマスがみたアナの幻影も回収されている。

ラストは、トーマスとアナがタッグを組んで、他の村の霊たちも回収していくのかなという感じの終わりだったのでシリーズ化してもらいたいと思うけれどどうなんだろう。単に、トーマスとアナが、その才能を活かして今後も生き続けていくということの描写なのかも。
タッグを組む感じもさりげなかったし、なんだか全体的にさり気なさすぎるところもあってストーリーとしては大事なところを掴みのがしているようなもどかしさもあるけれど、全容がスッキリわからないことで奇妙なリアルさとファンタジーさも手元に残る。
好きな一本になった。