さすらいの雑魚

ケイコ 目を澄ませてのさすらいの雑魚のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.1
人は、優しい。
それこそ泣きたくなるくらいに、皆、優しい。
だけど、時代が厳しい。
運命が厳しい。

ミット打ちの音だけが強く響く古いジムに、澄んだ眼でコンビネーションを放ち、フットワークを刻むボクサー。
効果音もバックミュージックも最小限に抑えた演出。
そんな静謐な聖域を思わせるボクサーの楽園も、経済効率とかコロナ禍という時代の波に洗われ崩れてゆく。
書き込まれた『許せない』との一言が重い。
誰に向けたでも無い、あえて言うなら全世界に向けての、ノートに封じた、ゆき先の無い怨嗟。

岸井ゆきの が聴覚障害者&ボクサーと言う難役を快演。
衣装の上からでもわかる格闘家ボディのラインがなんとも言えず美しく。また、信じられないほどの高速ミット打ちもあいまって、ストーリーの説得力を増していた。
やり場の無い哀しみと怒りを込めたラストバトルの雄叫びに、私の寒イボ立ちまくったぞ。

ジムの会長の三浦友和との師弟関係が良き。