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田舎の日曜日のHKのレビュー・感想・評価

田舎の日曜日(1984年製作の映画)
3.8
先日観た長尺のドキュメンタリー作品『フランス映画への旅』の監督ベルトラン・タヴェルニエをほぼ知りませんでしたが、本作をU-NEXTでみつけて鑑賞。
カンヌの監督賞などを獲っているタヴェルニエ監督の代表作の一つのようです。

舞台は20世紀初頭のパリの田舎、紅葉の季節がまるで印象派の絵画のような濃厚な映像で描かれます。
物語はある日曜日、田舎の老画家の邸を長男一家(男の子2人、女の子1人の5人家族)と独身の長女が訪れ、どちらもその日のうちに帰っていくというだけの話。

誰かの鼻歌が聴こえ、時間はゆっくりと流れ、子供たちは暇を持て余します。
田舎の実家のこの懐かしい雰囲気には万国共通の要素があるんでしょうか。
育った環境は人それぞれだし、そう感じる世代も限られているのかもしれませんが。
邦画だと是枝監督の『歩いても歩いても』なんかにも似た雰囲気があり、そういえばあの映画の長男(阿部寛)も絵画と縁のある仕事をしていたのを思い出しました。

最近の老画家の絵を見てどれもパッションが無いと言う長女は、屋根裏で見つけた古い絵を気に入り、誰の絵か尋ねます。
老画家は40年前のある若い画家の絵だと答えますが、それはまだ情熱があった頃の自分のことでしょうか。

長男にふとよぎる父親(=老画家)の死のイメージ。
老画家や長女の前に現れる亡くなった母親(=老画家の妻)のイメージ。
老画家にしか見えていない気もするご近所の2人の女の子は現実か幻か・・・

私は老画家と長男の間くらいの世代ですが(いや、もう老画家の方に近いか)、本作は若い頃に観たとしても全く面白いとは思わなかったでしょう。
今観て正解の映画でした。
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