トッド・フィールド監督作は『イン・ザ・ベッドルーム』以来で約20年ぶりの鑑賞。
『アイズ・ワイド・シャット』の撮影で(この時は俳優としてですが)キューブリックの近くに長くいたせいか同じような匂いを感じます。
集中力を要する作品ではありますが、実によく練られた作りになっていて噛めば噛むほど味が出そう。
そのくらい観る人によって、観る回数によって感じ方、解釈が変わる作品だと思います。
大筋ではキャンセルカルチャーを扱ってはいるのですが、権力、芸術的才能と人間性、「正義」という名の「悪意」、無自覚の罪、歴史的権威と大衆性なんかも絡めていて実に複雑な味付けになってる脚本は見事。
名優ケイト・ブランシェット様の演技を存分に堪能できる作品ですが、ニーナ・ホス、ノエミ・メルランも素晴らしかったし、マーク・ストロング、ジュリアン・グローヴァーも渋かった。
個人的には新人チェリスト(オルガ)役のソフィー・カウアーのやんちゃ子な感じが魅力的に写りました。
堕ちるとこまで落ちたら後は上がるしかないと思うのでした~
◇どうでもいい雑記
私個人も音に対して敏感な方なので、リディアのチャイムや静かなはずのEVポルシェの内装部品のカタカタ音が気になったり、気に入らないBGMにイライラしたりする気持ちがめっちゃわかりましたw
◆ネタバレな雑記
・ラストは頂点を極めたリディアの没落ともとれるが、生家でバーンスタインのビデオを見て初心に帰り、様々なしがらみから解放され、音楽だけに集中できる環境を得た。クラッシックよりも若者の注目度がはるかに高いサブカル系(劇中ではモ〇ハ〇)音楽のオーケストラコンサートでタクトを振っている方が先進的であることからバッドエンドではないととらえることも出来る。
明確な答えのない作品もよいですなぁ。
・解説ブログをチェックして知ったのですが、リディアの自宅室内にクリスタの亡霊的な姿が一瞬映りこむシーンが2か所ほどあります。初見では全く気付かなかったけど、確認してみたら心霊動画的な撮り方をしていてゾッとしました。