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ティルのhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

ティル(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1955年。米国の中西部にあるイリノイ州、シカゴ。
メイミー・ティルは、空軍で事務員をするシングルマザー。14才の息子、エメットと共に比較的豊かな暮らしをしている。
夏休みのエメットを、南部のミシシッピ州、マネーで暮らす大叔父の家に預け。綿花の収穫を手伝わせるのだが。
そこは国内でもとくに人種差別が根強く残っている地域だった。

監督は、シノニエ・チュクウ。
脚本は監督と、マイケル・レイリー。キース・ボーチャンプ。
2022年に公開された伝記ドラマ映画です。
(Amazonプライムビデオで観られます)
※中盤で起きる重大な事件に触れています。⚠️

【主な登場人物】👛🍬
[アルマ]母。
[ウィーラー]甥。長子。
[ウィリー]事件の目撃者。
[ウィリアム]公民権団体のLDR。
[エメット]息子。
[エリザベス]モーズの妻。
[キャロリン]商店の主。
[ジーン]彼氏。
[シメオン]甥。末っ子。
[ジョン]父。
[マイリー]メドガーの妻。
[メイミー]主人公。
[メドガー]公民権団体。若い。
[ミラム]ロイの異母兄弟。
[モーゼ]大叔父。
[モーリス]甥。真ん中。
[レイフィールド]公民権団体。
[ロイ]キャロリンの夫。

【感想】🏙️🫂
チュクウ監督は、1985年生まれ。ナイジェリア出身の女性。
1才の時に家族に連れられて米国へ。アラスカ州で育つ。
2012年に長編デビューして、今回が3作目。脚本も担当している。どれも黒人女性を主人公にしたドラマ映画で。実話か、実話モチーフのリアル志向です。

見ていると自然に女性監督だと分かる内容。これほど性別で視点が違うのかと驚かされた。

👦🏿〈序盤〉🧑🏿‍🌾🛻
仲のいい母の過保護な愛情。
世間知らずなエメットお坊ちゃんは、白人社会で差別される黒人。のびのび無茶な行動をとるから、はらはらさせられる。
サマーキャンプに出掛けた子供を見守っているような気分。
ずっと感情が刺激されるので見飽きない。

黒人コミュニティの明るさと白人社会の恐怖。
仲間と過ごす時の和やかさが上手く表現されているので、人種差別される時の落差が大きい。
近代では見かけない露骨な差別を体験できる。

ホラーにも共通しているけど、女性にとっては体格で勝る男性自体が恐ろしい存在。なので、危険な状況を描くための引き出しも多い。

👦🏿〈中盤〉⚰️💐
エメットの死でドラマのはじまり。
息子を屈辱的に殺される苦行。
悲劇を隠さずに見せる事で抑止力にしたいのだろう。
引き裂かれるような痛みに襲われる。
辛すぎて耐えられない。

人種差別が蔓延る国を変えてゆくための苦渋の決断。
命知らずな母が使命を帯びた時、同時に強さを得る。
怯える周囲を巻き込んで、岩盤と対峙してゆく。

👦🏿〈終盤〉🏞️🧑🏼‍⚖️
通夜の先へ。
映画で心情を吐き出せば、世界に向けたメッセージに。彼女を襲った悲劇を疑似体験しているので、痛みが染みる。
仕事に没頭している時は辛さを忘れられる。
作り手が穏やかなので、起きている過酷さのわりには何とかなる。

例のごとく法廷劇に。
傍聴席でうんざりするかと思えばそうでもなかった。
白人に立ち向かう黒人の姿を描いてあって、はらはら。
よくある作家が法廷で気持ちよくなる類いのものではないので、嫌な感じはしない。
その分リアルなので、裁判の辛さは存分に味わえた。

【映画を振り返って】📻🎵
心が疲れた。
今年は「ブレイクスルー」映画が多くて大変。
温室でぬくぬくしたいので、1年早送りしたい気分に。
世間では「大型新人」の登場が相次いで華やかなので。報道記者のような人だと、生きいきしているから、千差万別だ。

題材と監督の温度差。
これが若干気になる。
メイミーを空気系で描いてあり、代わりに喋る周囲も幽霊のよう。
イベントが起きて、ベルトコンベアー式で流されてゆく。
旗振り役の裏側にしては出力が物足りない。
その分、子供を亡くした悲しみがずっとつづくので涙活するには優れている。

[メイミー・ティルと事件関連]💍
1921年生まれ。ミシシッピ州出身の女性。
シカゴにある、白人中心のアーゴ・コミュニティ高校を卒業した4人目のアフリカ系アメリカ人。

劇中での元夫、ルイスはアメリカ陸軍と紹介されているが、実際は元ボクサー。
不貞後に、メイミーへのストーカーと暴力行為で、陸軍と懲役の2択を迫られて入隊している。

息子エメットを襲った犯人は、おそらく彼を身元不明にするつもりだったのだが、遺留品によって特定される結果に。

裁判の後、メイミーは黒人の自由と平等を訴える公民権運動の活動家に。息子のような被害者が出ないように講演を続けた。
仕事は教師に転職し、シカゴ公立学校に23年間勤務。
貧困の子供の擁護に尽力し、40年以上にわたって活躍した。
2003年、81才でその生涯を閉じている。
亡くなった子供の弔い合戦と、未来の子供たちのために生涯を捧げた偉大な人物だった。
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