シャチ状球体

生きる LIVINGのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.4
通勤の時点で既に序列に応じた謎ルールが適応されてて、しかも職場では資料や市民への対応が様々な課でたらいまわしにされて……いかに労働が無意味で空虚なものかがいきなり強調され、そんな労働に人生を捧げてきたウィリアムの心情に最初から共感しやすくなっているのは巧い。

オリジナル版は所々しか覚えてないけど、ウィリアムがハリスに伝える好意って普通にミソジニーだよね。「君が来てから職場が変わった」って、職場の花として女性を採用してると言ってるようなもんだし……そこに対して批判的な視点も出てこないので、リメイクをするにあたってアップデートしてほしかった。

あと、今はイギリスも日本も終身雇用が消えて正規雇用と非正規雇用の格差も拡大するばかりの状況なのだから、正規公務員自体が身近ではなくなって遠い世界の出来事のように見える。
単調な毎日を送れるほどの賃金をもらっている人が、ウィリアムのような人間像に自分を重ねられる人が、今の時代にどれくらいいるのだろう。
この映画のおかげで色々な意味で虚しくなった。
シャチ状球体

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