ウシュアイア

生きる LIVINGのウシュアイアのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.7
黒澤明原作の映画の翻案作品。

とにかく脚本・演出に無駄がなく100分程度でまとまっている。
説明的なセリフが一切なく、芝居や映像を見れば言葉になっていない状況がきちんと伝わってきて、理解しやすい。地味なヒューマンドラマではあるものの、分かりやすく冗長さがないので、集中して観ていられた。ドラマ映画とはかくあるべしとお手本のような映画だった。

脚本はイギリスを代表する作家カズオ・イシグロが手掛けている。
以前Eテレで観た『白熱教室』で、自身は(人間の)普遍的なことを書く作家と認識されたい、と語っており、普遍的な人間の姿がテーマになっている。また、同時に人間の普遍的な部分がテーマならば、舞台設定は重要ではなく時代や場所は自由だといったことも語っており、黒澤明の原作のテーマに普遍性があったからこそ、場所をイギリスに変えても成立するのだ。

余命が限られる中で人はどう生きるか、というテーマはカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(主人公が若者の話だが)でも取りあげられており普遍的なテーマでいろいろな作品で取り上げられている。古典作品ということで、「生きがいとは?」といったメッセージ性は極めてシンプル。ただ、生きがい云々はちゃんと生活できるだけの給料があってのことなので、すべての人には当てはまらないのかもしれない。
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