Kientopp552

すずめの戸締まりのKientopp552のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
 中編アニメ『言の葉の庭』(2013年作)で大人のアニメへの展開を予想させた新海アニメ・ワールドは、次の、長編アニメ『君の名は。』(2016年作)以降、『天気の子』(2019年作)を経て、本作(2022年作)へと三年毎に作品が発表され、『言の葉の庭』とは別の歩みを辿る。『君の名は。』以降の、その展開を鑑みると、そこに一つの制作定式を新海が見つけたのではないかと筆者には思われる。

 つまり、『言の葉の庭』で見せた、リアリティーのあるストーリー性を離れて、ストーリーを基本的にファンタジーとする。その際、日本的民俗の要素をストーリーに取り入れる。主人公は、中学生・高校生とする。女子生徒には、ファンタジーでもあり、宮崎駿アニメ・ワールド並みに特殊の能力を持たせる。以上、新海がこのような制作定式を立てたと類推すると、上述の長編アニメ三作は、理解しやすくなるのではないか。

 という訳で、この制作定式を本作に当てはめると、どうなるか。

1.ファンジー性:現実世界、つまり現世(うつしよ)と常世(とこよ)が、扉・後ろ戸によって結ばれており、主人公たちはこの扉を通じて、二つの世界を行き来することが出来る。

2.日本的民俗:常世の概念自体が民俗的、ないしは、神道的世界の、「あの世」の理解であると共に、すずめの苗字が「岩戸」であり、しかも、すずめが叔母といっしょに育った場所が宮崎県である。岩戸と宮崎と言えば、「天の岩戸」が宮崎県にあったという日本神話の代表的な、女神・天照大神の伝説である。

3.主人公は、すずめという、高校二年の女子生徒である。

4.すずめには、常世に繋がる「扉」を見つけ出すことできる、特殊な能力がある。

 何れにしても、本作では、前作二作に較べて、ファンタジー物語の恣意性が少なく、構造化されており、映画終盤における、日常の挨拶語「いってきます」と「お帰り」に込められたメッセージ性がはっきりしていて、好感が持てる。
Kientopp552

Kientopp552