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すずめの戸締まりのTのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.0
新海誠は好きで楽しみにしていただけにかなり凡庸な映画になった印象。『天気の子』の方がよっぽど攻めたチャレンジを随所にしていて好きだったのだが本作は賛否が分かれるようなチャレンジングさがない。

男性主人公で描いてきた作家がJKを主人公にしたところからストーリーの積み上げに失敗した感じがする。
特に旅するロン毛のイケメンに一目惚れするというところから、彼のことが好きになるエピソードがほぼ無いまま進行して行き(後半で彼女の行動原理の一端は見えるものの)その後も何故こんなにも命を張れるのかがぼんやりとしている。

新海誠は綿密で繊細な絵を描ける人であるからこそ、フィクションよりも現実的な描写によってこの世界を構築してくれることに期待したのだが、今回は少しフィクション要素が強い上にその描写も繰り返し表現になる。

震災というテーマをここまでエンターテイメントに昇華できるバランス感覚は見事だし、日本を代表する監督がこの物語を語る意義は大きい。彼の日本社会への眼差しは『天気の子』のときから続くものでありそういう視点が好きだと言える。

とはいえ新海誠であればもっと日本中が驚くような、感動するような作品を作れたのではないかと思う。高い期待値を込めて次の作品を待ちたい。
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