えいがうるふ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのえいがうるふのレビュー・感想・評価

1.0
監督の前作が完全に”not for me”だったのでロードショーはスルーするつもりだったが、オスカー総なめ受賞で興味を持った友人に誘われてスクリーンで観ることに。大好きなミシェル・ヨーの受賞も嬉しかったし。
しかしながら結果は・・前作に輪をかけてNOT FOR MEだった。トホホ。

確かに、アカデミー受けする要素がこれでもかとてんこ盛りに詰め込まれているのは感じた。マルチバースで+10、アジア系メインキャストで+10、移民の社会生活で+10、LGBTで+15、家族愛で+20・・・てな感じで、全体のバランスはともかく注目要素の有無で加点される総合得点で審査されるならばなるほどこれが受賞するのも分からなくはない。お忙しいお偉いさん方と、コスパ・タイパを最重要視する現代のコンテンツ消費者にとっては、このあふれるほどの情報量こそが満足度に直結するのかもしれない。

でも自分にとっては引き算ができないシェフが作ったやたらと雑味の多い料理を次々と目の前に供され、その奇っ怪な盛り付けに唖然としつつ口に入れるも、味わう暇もないまま次の皿が来る。の繰り返しという、感性がすり減るばかりで一向にお腹の満たされないディナーに招かれた気分だった。ベーグルの穴ほどの栄養も感じられない。
これがもし、ものの数分で食べ終わる話題性ありきのB級グルメだったら、つまりせいぜい30分の超短編だったなら、全然ありだし私も絶賛したかもしれない。でも、B級ゲテモノ料理でフルコースを仕立てられても困るのだ。

あと前作同様、下ネタが下品、というより幼稚過ぎて笑えない。小中学生レベル。この点は前作で受け入れがたい嫌悪感を感じたのと一緒で全く面白く思えなかった。

壮大な茶番をやっているようで実はその根底に描かれた親子愛・家族愛に最後に思いがけず泣かされる作品というものは確かにある。でもこの作品の場合、ひたすら奇抜な世界観を映像化したものを観客に見せつけるのに忙しく、一番知りたい登場人物の心象描写がいずれも浅く乏しかった。これでは刺さるものも刺さらない。残念。
久しぶりにぶち当たった、私にはダメな方のA24だった。