きのはる

ピンク・クラウドのきのはるのネタバレレビュー・内容・結末

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

子作りってのは他にすることがないからするってことを改めて認識させられる。子育ては一種の娯楽である。主人公の女が男と一緒に閉じ込められたのは見方によれば幸運だっただろう。停滞した空間の中で生産、増殖ができるのだから。主人公の妹も、一人の男と複数の女の子たちと閉じ込められたのなら、数年経ったら家の中で小さな帝国を築くかもしれない。
主人公の女は理性的だった。子作りはしちゃったけど理知的で、きっと行動的だったのだろう。それに最後まで希望を捨てようとしなかった。ピンククラウドが蔓延る以前の世界ではそれは間違いなく強みだったはず。だけど一軒の家の中という閉じられた世界の中で彼女の長所は生かされどころがない。家の中で、頭の中でエネルギーがぐるぐる回って積極的自殺へと向かわせる。
反対に男の方は楽観的、内向的で、きっと今までも流されて生きてきたのだろう。だから家の中でも茫然と生きていける。息苦しさを感じながらも、袋小路と知りながらも目の前の雑事だけを捌いて訥々と生きていける。最終的に死ぬのは変わりないが。これも一種の自殺。消極的自殺。セルフネグレクト?
その先繁殖はどうするのだろう。精子をドローンで女の子の元に送って、女の子が自力で出産するのかな?だけどそうやって人口は維持できないだろうから、やがてインフラも死んで、人間は絶滅するのだろう。みんなで家に引きこもって、人類の緩やかな自殺。

外に出れないのにインフラすげえ保つんだな、国家すげえってツッコミはなしで。物語の主題はサバイバルではないから、そこはまあ都合良くしてくれて一向に構わない。
素直にすげえ面白かったです。
きのはる

きのはる