2023年。いやあの、面白いんですよ。面白かったんです。閉店間際の本屋の少女アマンダは今日も「想像の友達(イマジナリー)」ラジャーと共に屋根裏で大冒険、部屋は見る間に凍って雪山となり、ダンボールはソリに、前に結んだぬいぐるみは巨牛となって滑り走る。そんな空想の世界で遊んでいたふたりに迫る怪奇中年男性……。そしてある事件によりラジャーはイマジナリーだけが生きる世界へ足を踏み入れるのだが。
面白かったんですよ(3回目)。ギャグとか逆張りと思われたくないんですけど、児童文学の原作世界をこう、手堅くも豊かに広げていて、確かに宣伝内容にパンチはないんですけども、あれから想像される「なんかみたことあるな……」感よりは遥かにイイ感じのアニメ映画でありました。
「イマジナリー」は、欧米人の言う「イマジナリーフレンド」よりももうちょい濃い目の存在であります。特にアマンダにとってのラジャーは、彼女が抱えている欠落を補うために生まれた大切な存在で、その辺の「ベストフレンド」さや狭くて深い世界が、豊かな色彩と動きで描かれていて、ストーリーもちゃんとしてるし、声優陣も好演で、欠点らしい欠点はないように見受けられる。
ただ何と言うかね、全体的にこの、全部が少しずつ物足りないのね。「想像力世界はすごいが、このくらいかぁ」とか、「怪奇中年男性とモノクロ美少女もっと見てぇなぁ」とか、「イマジナリーの皆さんがどうにも面白味に欠けるな……」とか、「そこは台詞で説明しちゃうんだ」とか「もうちょっとガツンとくる見せ場や見せ方はないの？」とか。
そういう微妙な物足りなさ、料理で言うなら「この小鉢、盛りが少ないな……」「もう少し塩味がほしいな……」「ハンバーグが思ったよりちっちゃいな……」みたいな小さな不満が寄り集まって、「面白いんだけど、ワッとなるほど面白くはない」といった腹五、六分目の感想になってしまうのである。
で、ラストバトル、これ謂わば「想像力」のバトルであり、いくらでもモリモリ盛れるし、こっちの想像力を遥かに越える空想力(ぢから)が爆発してほしかったわけであるけれども、なんかこう、ね。すごい大戦になりそうな手前で、ちんまり収まってしまって、おわり。想像力が人を支える映画であろうに、その深さが出きっていない、
結果「面白かったですよ、ウン」と言って、おしまい、といった、言ってみたら65点くらいかなと観に行ったら64～66点くらいをお出しされた気持ちになる。声優陣はみんなナイス演技だし(エッセー尾形の怪奇中年男性は特に素晴らしい)キラッと、あるいはギラッと光るシーンもあるにはあるが、あんまり刺さってこない。
悪くないんスけど、取り立てて尖ったり輝いたりもしていない、よく言えば安定した作りのアニメ映画であった。美術とか動きはよかったからこれ、脚本の組み木やヤスリがけ、演出の細かな部位がよくないのかな……？ ともあれご家族で観ることのできる健全なアドベンチャーでありますので、もうちょっとほら、冬休みだし、客とか入ってほしいですね。
