櫻イミト

めぐりあう時間たちの櫻イミトのレビュー・感想・評価

めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)
3.5
英小説家ヴァージニア・ウルフの代表作「ダロウェイ夫人」(1925)を起点に時代の違う3人の女性の1日を平行して描く。監督は「リトル・ダンサー」(2000)のスティーブン・ダルドリー。音楽は「ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ」(1984)のフィリップ・グラス。原作&原題「The Hours」は「ダロウェイ夫人」の発表前の仮題。

1923:ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)
「ダロウェイ夫人」執筆中
1950:主婦ローラ(ジュリアン・ムーア)
「ダロウェイ夫人」を愛読し生きることに絶望している
2001:編集者クラリッサ(メリル・ストリープ)
「ダロウェイ夫人」とエイズ感染している作家の恋人から呼ばれている

ヴァージニア・ウルフに興味を持ち鑑賞。冒頭クレジットで”音楽フィリップ・グラス”の名を見つけて期待が高まった。「ミシマ:~」を観てからサントラを聴き続けている音楽家。

と、思ったら本作の構成も「ミシマ:~」に酷似していて苦笑してしまった。同作は三島由紀夫の生涯に並行して死と同性愛にまつわる3人の男性性を描いているが、本作はその女性版と言える。

パズルを埋め合わせていくような編集が単純に面白かった。ただカギとなる小説「ダロウェイ夫人」について殆ど辿っていないのは一本の映画として中心に穴が開いているようなもので致命的と感じた。本作を観るには原作の把握が必須と思われる。

スティーブン・ダルドリー監督作は世間的に評価されているものばかりで自分もまあまあ楽しめるのだが、どれも”小賢しさ”を感じてしまう。同様の印象がある監督は例えばミヒャエル・ハネケ、シャンタル・アケルマンなど。共通点は何か?
櫻イミト

櫻イミト