トケグチアワユキ

名建築で昼食をのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

名建築で昼食を(2020年製作のドラマ)
4.4
いつからはじまったのかわからないけど、
製作 : テレビ大阪
制作 : 松竹撮影所
プロデューサー : 清水啓太郎(松竹撮影所)
脚本 : 横幕智裕
監督 : 吉見拓真
音楽 : ベンジャミン ベドゥサック
というチームが、ストーリーのない名所紹介とかレシピを原作(原案)につくるドラマが次々とテレビ東京とかBS松竹東急で放送されてて、ドラマの世界観、キャスティング、映像などなど、まあ気が利いてるっちゃ利いてるわけで、ついつい観てしまう。

誤解を恐れずに簡潔にまとめると、マガジンハウスのドラマ版だよね。
HanakoもBRUTUSもan anもPOPEYEもクロワッサンも。
Casaもあるね。
ベースにセレクトショップとかカタログ的要素を置いた上で、知性のくすぐりと重くならない程度(←ここ重要)にシリアスなドラマ展開っていう。

私が最初にこのチームの作品を観たのは、たぶん「ちょこっと京都に住んでみた」っていう短いシリーズとその続編だったか?
京都の地元に根付く、あくまで住人に向けた老舗を紹介するドラマ(書いててやっぱ変な感じするわ。〈老舗を紹介〉ってドラマに付ける枕詞じゃないよなぁ)。
町家に住むおじいちゃんの家に滞在して、おじいちゃんにおつかい頼まれる。

割と好意的に受け入れられたことで、次に企画されたのがこの「名建築で昼食を」だと思う。

原作とされている本は見たことないので、どこまでが本の設定でどこからがドラマのオリジナルかわからないけど、とにかく池田エライザの演じる春野藤がドラマ世界で人生ビミョーにうまく行ってないところが、このドラマの肝だ。
鬱々とし、グズグズと悩んでいるからこそ、ドラマに奥行きが生まれる。

正直、〈乙女建築〉とか変なまとめ方するなよと思ったりもするが、画面の切り取り方、画質処理、色合い、もちろん対象になる歴史的建造物のデザインやインテリアなど、ドラマ以外に見るべきところはたくさんあるし、ストーリーもグズグズしてるだけでそんなに深刻に展開しないし、サラッとしてるからストーリーは忘れちゃうんだよね。
次の回が始まると思い出すけど、またすぐ忘れる。その繰り返し。
最後に解決するとかもどうでもいい感じ。
したかもしれないけど、だからナニ?だよ。
でも、だからいいんだ。
ファッション誌を隅から隅まできっちり読む人がいないように、こういうドラマで人生の意義とか言われたくないじゃん、オーディナリーピープルとしては。

あと、藤の住んでいる部屋が、これでもかっていうくらい風通しのよい部屋で、カーテンがフワーって広がるところが気持ちいいかなぁ。
部屋のリノベやインテリア含めて、これ観てるのは幸せ。


実はこのドラマが絶大なる支持を受け、のちに大阪編という続編がつくられるんだけど、なぜ春野藤は大阪にいるのかとか、ご都合主義的設定に笑っちゃうんだけど、名建築見られりゃいいか、みたいになっちゃうのがこのドラマのスタイリッシュな意匠だと思うわけ。
ダサかったら何だこの設定とか言うと思うんだけど、黙っちゃうんだよな。
いや、この制作チーム、すげぇ鉱脈見つけたよなぁ。