凛太郎は元柚彦

ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルーの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

5.0
「兄は錨のように俺の人生を海に沈めている」
幼い頃からドミニクの人生には、統合失調症の双子の兄トーマスが常に付いて回っていた。
大人になり、癌になった母は死ぬ前にドミニクにこう言った。「トーマスを頼むわね。約束して」
この遺言がドミニクの人生においてどんな意味をもたらすかなんて知る由もなく、ドミニクはこう返事をした。
「約束するよ。任せて」

吐き気がするほどリアルな家族ドラマを描かせたら右に出る者がいないデレク・シアンフランス監督が手がける傑作ドラマ。
全6話と短いし、双子の兄弟をマーク・ラファロが演じてるのが見どころ。
人間ドラマの濃度が濃すぎてとにかく息苦しい。だが、とにかくセリフの内容や何気ないシーンの演出が白眉で画面に引きつけられてしまう。音楽の使い方も素晴らしい。
家族とは、愛ではなく、断つことのできない呪いなのか?血筋とは呪縛なのだろうか?
本当に恐ろしい話である。誰もが、この地球上に存在する誰もが見て見ぬふりをして自分にとって都合のいい物語に書き換えてきた、家族に対するエゴ。このドラマの先には、直視して受け入れても人間という業を背負っている限り、逃れることができない、無視することしかできない現実がただ広がっていた。

追記:このドラマで双子の兄弟を演じ分けたマーク・ラファロには弟がいた。弟スコット・ラファロは2008年に銃による殺人事件で亡くなっている。主人公ドミニクは、マーク・ラファロの写し絵だ。本作は、マーク・ラファロが過去に向き合う物語でもあるかもしれない、そんなことを考えながら観ると感慨深い。