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リプリーの盆栽のレビュー・感想・評価

リプリー(2024年製作のドラマ)
4.7
美の完全犯罪


 あまりにも重厚かつ上品で、一気見するには勿体無い傑作サスペンス。本作の原作『The Talented Mr. Ripley』は過去にも何度か映像化されているほど有名なパトリシア・ハイスミスの代表作。
 1人の詐欺師がとある依頼を受けてイタリアに渡ることに。そこから彼は偽り、殺し、騙し合いの波瀾万丈な生活を送ることになる。

 何よりイタリアの美しすぎる風景。本作にはローマをはじめ、ナポリ、パレルモ、ヴェネツィアなどの有名な街並みを極上のサスペンスで眺めることができる観光ドラマでもあります。

 そしてどうしてもこれだけは語りたいこと。それは全ショットが異次元の美しさ。これに至っては言語化することでさえ難しいので実際に肌で感じていただきたいのですが、モノクロだからこそ際立つ繊細な1シーンが永遠に続く不気味さ。正直なところ、ドラマのクオリティではないです。一つ一つの動作を丁寧かつ煌びやかに撮っているため、画の力が強すぎる。
 特に死体処理のシーン。『アングスト』並にノー音楽でゆっくりと映しているので決して気分は良くないものの、画がキマりすぎているため必然的に"美"が生まれてしまう。調べてみると撮影監督はPTA作品でお馴染みのロバート・エルスウィットで納得。今思うとPTA作品も画はバグってた印象。ですがそれらを余裕で超えてくるのが本作『リプリー』です。

 キャスト陣も個人的にはかなり大満足。『太陽がいっぱい』でトム・リプリーを演じたのはアラン・ドロンなので、どうしてもアンドリュー・スコットは顔負けしてしまいますが、演技はこっちのほうが断然上。冷静沈着なリプリーを完璧に演じ切っています。原作では20代の設定なので青年感はありませんが、Netflixドラマなのでビターな設定に変更して問題ありません。これを機にアンドリュー・スコットのファンになりました。彼の演技がどストライクすぎて惚れてまう。

 総括して、好き嫌いは分かれると思いますが、常に静かな緊張感が漂っているサスペンスが好きな方にはハマると思います。僕も観終わったばかりですが、今すぐにでも2周目いきたいレベルです。それほど毎エピソードが素晴らしく、魅了されっぱなしのドラマでした。
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