社会のダストダス

サーヴァント ターナー家の子守 シーズン1の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

3.9
AppleTV+オリジナル作品。M・ナイト・シャマランが製作のドラマシリーズ、うち何話かは監督を務めている。シャマラン作品はシャマるのとシャマらないのが分かれるけど、これはかなりシャマりました。

ネトフリとかに比べるとラインナップがまだまだ弱い印象のAppleTV+。あの『CODA』も本来ならAppleTV+の作品なのだけど、大人の事情のアレソレで劇場公開が優先になった(結果それでよかったと思う)ため、ネトフリやアマプラと比べるとあまり活用できていない現状。でも、せっかく入会したのだからなにか月額分の元をとれる作品は無いかと探していたら好みの作品を見つけた。

ドロシー(ローレン・アンブローズ)とショーン(トビー・ケベル)のターナー夫妻のもとに、赤ん坊のジェリコの世話をするために若い子守リアン(ネル・タイガー・フリー)が雇われる。住み込みで働くことになったリアンだが、事前には知らされていない事情があった…

子守の対象であるジェリコと対面したリアン、しかし“それ”はよくできた人形であり本物の赤ん坊ではなかった。本物のジェリコは数か月前に亡くなっており、ショックで緊張症になったドロシーは一時的な精神療法として渡された新生児人形をそのままジェリコと思い込むようになってしまっていた。世間から同情の目を向けられることを避けたかった為、夫ショーンのほかにこのことを知るのはドロシーの父親と弟のジュリアン(ルパート・グリント)のみ。

ここまでのあらすじだと若い子守さんが大変な事情の家に来てしまった奮闘記が始まるのかと思ったが、リアンは特にそれに驚く素振りも見せず誰も見ていない場所でも黙々と子守としての仕事をこなしていく、この子もなんか変だ。夫ショーンもリアンの芝居に有難く思いつつも不気味に感じ始める。そして数日が経った頃に極めつけの緊急事態が起こる、人形であるはずのジェリコが本物の赤ん坊になってしまう、誰の子!?

主演のひとりドロシー役のローレン・アンブローズは多分初めてお目にかかる人だけど、夫ショーンを演じるトビー・ケベルは『キングコング 髑髏島の巨神』の兵士の一人として見覚えがある。ハリポタの親友役の記憶が強いルパート・グリントが凄く良い味を出している、依存症の役とか似合うと前から思っていた。

『スプリット』のアニャ様、『オールド』のトマちゃんのときも思ったが、シャマランの若手女優発掘能力は素晴らしいと思う。本作のネル・タイガー・フリーの演じるリアンは清楚だが妖しげで捉えどころがなく謎が多い、まさにシャマランのスケベ心を体現したキャラクター、私も赤ちゃんになりたいと思った。

ほとんどターナー家のおうちの中だけで展開されるので、非常に演者に寄った映し方が各人の心情を覗き込んでいるようで印象的。通しでシーズンを観終わるころには家の間取りとか完璧に把握できるくらいに外に行かないので絵的には地味になりがちだが、エピソード毎に象徴的な小物や料理があったり、毎度何かが起こりそうだと感じる雰囲気が凄く好き。

特にシャマランが監督しているという第一話は、シリーズの導入として完璧な惹き込み方で、これ観たら第2話を観ないなんて選択肢がないくらい面白かった。ちょうど今、シーズン3に更新されている時期だったので、AppleTV+の月額分の元を十分に取れる作品に出会えてよかった。