ある一定の条件を満たした作品には教訓が発生する
その点、三部けいの作品には教訓が詰まっている
『勇気ある行動の結末が悲劇でいいはずがない』
とてもヨイ言葉
売れない漫画家の藤沼悟
彼には悪いことを予見する能力
『リバイバル』が備わっていた
少し前の時間に戻り、今後起こる事件、事故の違和感を体現させる特殊な能力
田舎から出てきた母が刺され、自身に嫌疑がかけられる
事件は過去に起こった誘拐事件に端を発していた
突如起こった『リバイバル』
気づけばそこは、雪の降る小学校
死んだはずの雛月加代を守るべく彼は小学生を『リバイバル』する
東京リベンジャーズの作者は、きっとこの作品が好きなんじゃないかと思う
全然遠く及ばないけどね
母を救う為、雛月を救う為、何度もリバイバルを繰り返し
その都度、壁にぶち当たる
困難に立ち向かう行動と、無力さの悲哀
足掻く姿はタイツこそ履いていないが、まさにヒーローとして申し分ない
勇気ある行動
コレが物語の根幹としてあり、全てのヒーローに通じる理念として描かれている
大きく前半部の北海道小学生パート、後半の現代東京パートに分かれている
特に前半部の小学生期には、雪、煙突の煙、枯れた木など、時代を映す背景がとても綺麗にノスタルジックに描かれている
原作でもそうだったけど、非常に良く物語を掴んでいる演出で目を奪う
雛月がとても可愛い
くすんだ目で「バカなの?」って聞いていた子が、徐々に正気を取り戻す様子を見事に演じている
雛月が可愛いだけに、虐待パートは心が傷む
ここでは、悟の母親が毅然と立ち向かい、大人とはかく在るべきなのだと態度で示しているのが好印象
非常に原作の良さを捉え、かく忠実にトレースはされていたと思う
後半部分はオリジナルな展開が目立つ
やや雰囲気は損なわれるものの、そこまで嫌味ではない
ただオリジナルのラストへの展開の方が好みでは在る
やっぱり三部けいはイイ
安直なタイムリープではなく、ストーリーに血が通っている
ホラーも上手い作者なだけに、ただ盛り上げるだけじゃなく、どこか片隅に影を潜ませる描写が冴える
そら、アニメ、映画、ドラマと引っ張りだこになるのもうなづける
『勇気ある行動の結末が悲劇でいいはずがない』
まさにこの言葉を象徴するストーリーと、勇気ある行動の結果失われた時間、それは無駄ではなかったことへ集束し
『僕だけがいない街』
が完成する
シナリオとして申し分なし、コレで楽しめなかったらどうすんの?って思える作品。
彼女 IN THE DISPLAYのエンディングがイカす
雛月がなんともツボだった
あの表情で「バカなの?」って言われたら、きっと小学生のオレは抱きついてる
そして言ってる
「おかわりお願いします」