紅孔雀

第一容疑者の紅孔雀のレビュー・感想・評価

第一容疑者(1991年製作のドラマ)
4.5
【第1話「連鎖」前後編】
スピンオフの“新人時代”を観終わったので、本家へ戻ってきましたが、ところがこれがツマラない。犯人と内縁の妻との諍(いさか)い等が延々と描写され、退屈の極み。よくぞこれで足掛け15年の人気シリーズになったものよ、と呆れつつ観ていました。
それが残り30分から様変わり。一刻を争うスリリングな犯人追跡劇となり、謎解きも重層的で、凄惨な娼婦連続殺人事件の深層が暴かれる見事な展開に。上司のヘレン・ミレンを女だからと反発していた刑事達も一転して彼女への忠誠を示し、思わず胸熱となって、おう、いいぞいいぞ、と嬉しくなりました。シリーズは、1991年(ヘレン46歳)から2006年(同61歳)までの15年間を描く。残り13話を観るのが楽しみです❗️ 評点4.0点。
【第2話「顔のない少女」前後編】
テニスン頑張れ!の巻。いや、いつもそうか。
ただ今回は結構の大ピンチで、自白者が病死、被疑者が収監中に自殺。さらに部下との情事がスクープされて四面楚歌に。
これも最後の30分で大逆転となるのがカタルシスでした。ただせっかく事件を解決したのに昇進もならず“ガラスの天井”はなかなか割れないのでした。評点4.1点。
【第3話「朽ちた野望」前後編】
少年への異常性愛が絡む大人社会の暗部を抉り、複数犯罪のトリックも見事。リアルな社会派本格ミステリと評価したい。『ハリーポッター』で強いインパクトを残したキーラン・ハインズさんも出ています。評点4.1点。
【第4話「消えた幼児」ここから1話完結】
本作から警視に昇進。テニスン、上昇志向強く大いに喜んでます❗️
幼児誘拐が過去の忌まわしい記憶を呼び覚まし、さらに重たいドンデン返しが最後に控える。テニスン自身の堕胎問題も絡んで。なんとも辛い結末でした。暗〜い話だが色々考えさせる問題作でもあり、引き締まった逸品と思います。評点4.3点。
【第5話「死のゲーム」】
これも実に面白かった。地方都市の上層階級の腐敗に絡む殺人を、本庁のテニスン警視が乗り込んで解決する。強かな犯人との丁々発止のやり取りに息を呑みます。地方署の太々(ふてぶて)しい感じの女警部が、中盤からテニスンの強い味方になる展開もウマい。傑作❗️と言っていい。評点4.6点。
【第6話「死者の香水」】
今回はリチャード警部(本庁でテニスンの部下。双子の女の子の父)が大活躍。刑務所に収監中の罪人が、外の世界で同じ手口の連続殺人を犯します。いいですねぇ、この不可能犯罪感。その謎を停職中のテニスンに代わり、リチャードが追うんですな。そしてテニスンがリチャードに「私の味方」とそっと言う場面に痺れました。最後がちょっと駆け足だったのが残念でしたが、シリーズ中でも上位の出来と思います。評点4.3点。
【第7話「裁かれるべき者」前後編】
地方都市マンチェスターに赴任(左遷?)させられたテニスンが、持ち前の正義感で犯罪無法地帯に巣食う闇に迫る。ヘレン(当時51歳!)の体当たりの演技も見もの。最後の展開が相変わらずスリリングで、取り敢えず事件も解決。しかしこの結末は苦過ぎた。評点3.9点。
【第8話「姿無き殺人」前後編】
最後の1作(これから楽しみに見ます❗️)を残して、今のところ最高傑作。ボスニア紛争に端を発する、現代ロンドンでの女性殺人事件を、引退間近のテニスン(現実には58歳)が追う。真相は歴史の闇に呑まれ警視庁上層部の圧力もあって、真犯人逮捕は困難を極める。頑張れ、頑張れと2度言いたくなる老テニスン奮闘編です。真犯人も敵ながら天晴れの悪党ぶりで、最後までハラハラする傑作サスペンス&ミステリでした。監督が「英国王のスピーチ」のアカデミー監督トム・フーパーなのも納得。画面も鮮やかです。評点4.6点。
【第9話「希望のかけら」前後編】
シリーズ主役のヘレン・ミレンは1945生れで現在77歳(出演時は61歳)。父は元ロシア貴族で、道理で気品があります。本作では、老父を看取り、定年まで数日、という落魄のテニスン像を見事に演じ、オスカー受賞は伊達ではないことを証明しました。
エミー賞3度の名作ミステリドラマも今回が最終回。犯人像が出色で、掉尾を飾るに相応しい傑作でした。今ちょっと、“テニスン警視ロス”気味です💦 評点4.9点。
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