かずぽん

刑事ヴァランダー ザ・ファイナルのかずぽんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【思いがけない結末】

(2016年・英BBC・89分×3話/原作へニング・マンケルの『クルト・ヴァランダー警部シリーズ』)

ついに最終シーズン。
ヴァランダーという一人の刑事の晩年を見届けました。彼は「刑事」という職業に別れを告げたけれど、彼の人生はまだまだ続きます。
本作で初めてヴァランダーの年齢が分かりました。55歳の設定でした。演じているケネス・ブラナーが1960年生まれですから、同年齢を演じていたのですね。
このファイナルでは最初から何やら不穏な雰囲気でした。あきらかにヴァランダーの様子が変だったからです。シリーズを通してご覧になって来た方は、ヴァランダーの父が晩年にアルツハイマーを患っていたことを覚えていると思います。ヴァランダーは、自分もその父と同じなのではと不安を抱きます。
父親の時には、ヴァランダーや家族の目線でアルツハイマーを見て来ましたが、このファイナルシーズンではヴァランダー自身の苦悩を見せつけられます。その分、彼の不安や恐れといった心情がリアルに伝わってきて、嫌でも共有してしまうのです。
思えばヴァランダーのシリーズは、「事件」と「ヴァランダーの内面」の描き方の比重がほぼ同じでした。危険を顧みずに無茶をするし、事件の見立てを誤って同僚に重傷を負わせてしまいます。そのことを後になって思い悩むのですが、それでも同じような過ちを繰り返してしまいます。
娘のリンダと孫のクラーラと接している時のヴァランダーは、普通のおじいちゃんの顔をして穏やかに笑っているのが印象的でした。医師の診断では若年性のアルツハイマーで進行がはやいかも知れないとのことでした。リンダがいてくれて良かったと思います。以前に祖父に寄り添っていた姿を見ているのできっと大丈夫。そう思います。

シーズン4(ザ・ファイナル)の内容は次のとおり。
【第1話…白い雌ライオン】
国際警察会議で南アフリカ・ケープタウンを訪れたヴァランダーは、現地の署長のヘーデン大佐から行方不明事件への協力を求められる。現地で青少年更生のボランティア活動をしていたスウェーデン人女性インガが、福祉センターに行く途中で消息を絶ったのだ。ヴァランダーは、インガが持って出かけたという地図の場所へ行こうとしたが道に迷い、荒れ果てた農場に辿り着く。と、そこには切断された黒人の指が落ちていて…
【第2話…愛の形】
劇場からの帰途、ヴァランダーはバイクに乗った3人組に突然襲われ、頭部を殴られた上、袋叩き状態。翌朝自分のベッドで目覚めるも、何があったかを思い出させないヴァランダーだった。その後、めまいや一時的な記憶喪失に見舞われるようになる。
そんな折、エリカという女性が刺殺体で発見。彼女には娘がいた筈だが行方不明。室内には2人の血痕と第三者の指紋が見つかった。エリカは、彼女が所有する農場を貸していたバイカーグループと揉めていたことが分り…
【第3話…失われゆくもの】
娘リンダの義父ハーコンが行方不明になり、捜索の応援を頼まれる。失踪理由に心当たりがなく、自殺の可能性もないらしい。しかし、夫がいなくなったのに妻のルイースの態度に不自然さを感じるヴァランダーだった。そして、湖畔でルイースの首吊り遺体が見つかる。ヴァランダーがハーコンの書斎で見つけたのは30年以上前のソ連潜水艦領海侵犯事件について議論する声が入ったカセットテープだった。30年前に一体何が…?
この事件解決後、ついにヴァランダーは退職を決意する。
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