めしいらず

お別れホスピタルのめしいらずのレビュー・感想・評価

お別れホスピタル(2024年製作のドラマ)
3.1
人の一生で最も荘厳な場面として生命誕生を描いたのが「透明なゆりかご」であったけれど、今度はその終焉を描いた厳かなドラマが展開する。終末医療に携わる病棟で患者やその家族の命と向き合い奮闘するスタッフたちの日常と、彼らや患者本人、その家族らそれぞれが抱えている人生の諸問題。自殺、引きこもり、老老介護、社会保障…。多くの社会課題も重ねられている。「(回復が望めないのを)全部分かっててそれでも聞くのは、嘘でも信じないともう頑張れないから」。 か細くなっていく命。先行きへの不安に揺れる患者と家族。散々苦しみ抜いて来た中でふと魔が差す瞬間が人にはあって、一線を超えてしまうのは実はそんな時なのかも知れない。己の運命は自死以外に逃れる方法がなく見えてしまう。「死にたい」と漏らす引きこもりの妹に苛立ちつい「死ぬ気もないのに周りを巻き込まないでよ」と投げつけてしまう主人公。詰られた妹が言った「生きるのが辛い人間にとっては(病死する人は後ろめたくなく)楽になれて羨ましい。自分で自分を殺さずに死ねるんだから」があまりに真に迫って響き胸を抉られるようだった。「死にたい」と言う人は無論「死にたくない」「生きたい」と言っているのだ。救いを求められた時。相手の素の弱さにふと触れた瞬間。嘘をつくのは場合によって尊いこともある。でもスタッフたちは死ぬことの手助けをしている訳じゃない。彼らは一人一人が最後の日まで生き切った満足をもって人生を終えられるように日々奔走する。
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