夏藤涼太

お別れホスピタルの夏藤涼太のレビュー・感想・評価

お別れホスピタル(2024年製作のドラマ)
4.2
#1話
さすが #透明なゆりかご の座組なだけあって、ドラマとしてのクオリティの高さと、テーマを引き立てる、いい意味で淡々とした演出は◎。挿入歌演出は…ない方が良かった気もしたけれど。

ただ原作と比べ、キツいシーンやハードなシーンを削ったりマイルドにするのは仕方ないとは言え、看護師や医師サイドが聖人のように改変されているのはもったいないかなと思った。緩和ケア患者のリアルを描くなら、医療従事者側もリアルに描くべきだが…NHKでもBSなら原作通りにやれたんだろうな

#2話
1話は「いいドラマだとは思うけど、charaの挿入歌がお涙頂戴演出すぎて #透明のゆりかご と比べるとなぁ」と思ったんだが…2話のこのとんでもなく恐ろしい演出の前フリだったのか!?1話のcharaは!?

「君じゃないと駄目なんだってあの言葉は、呪いだったのかも。52年間、愛してたんだか憎んでたんだか、わからない」
凄まじいセリフだ…まさに、愛は沼……
そしてこの結論を踏まえると、マツケンの冒頭の「この病院には愛が溢れている」という、一見ハートフルなセリフも、また多面的に思えてくるから……いやはやとんでもなく良くできた脚本である。2話にして評価爆上がり

#3話
「星の界」の方の挿入歌で、なぜだか涙が止まらねぇ…

とにかく1話内での各キャラによるテーマの対比が上手すぎて……ここまで良く練られた一話完結の脚本、地上波で久々に久々に見た気がする。あと皆演技上手すぎる。上手い人しかいなくて、「演じられたもの」というフィルターが存在しない。これは映像作品では当たり前のことなのだと思うのだけれど、この当たり前を実現してくれるドラマはほとんどないんだよなぁ
原作とは別物だけど、このまで完成度高ければ文句は言えまい

#4話(最終話)
1話こそ、原作やスタッフ前作の『透明なゆりかご』と比べて演出面に不満があったのだが、見ているうちに、その狙いがわかるようになってきた。

最終話のテーマは、「生きることを願うことのエゴイズム」についてだろうか。
意識が戻ることがない夫に(自分のエゴイズムで)延命治療を施したのに、妻の方が先に死んでしまう。自分の生きがいのために、自分の命と向き合う息子を否定する。自分の贖罪(と年金)のために苦しむ親を延命させる。延命させた上で孤独になるのを防ぐために命を奪おうとする。
いやはや、どれも地上波の連ドラで扱われるテーマではない。純文学でやるやつ。しかし、こんなテーマを地上波連ドラでエグい角度で掘り下げることに成功したのは、ある意味では、演出の方をポップにしたからなのかもしれない。

全4話ということもあり、消化不良のままのドラマも多い。だが、この物語は視聴者の心の中で完結させるべきものだろうから、どこで終わっても、ある意味では問題ないのかもしれない。

とはいえそれでも、続編、あるいは同じスタッフによる次回作を期待しています。
夏藤涼太

夏藤涼太