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いちばんすきな花のmaoのレビュー・感想・評価

いちばんすきな花(2023年製作のドラマ)
4.2
「勘違いされる人生だったけど、だからこそ、間違いないものがよく見えた」

それぞれにやるせなさや生きづらさを抱いている、年齢も性別も違う大人たち。ひとりきりだった彼らが〝4人〟になっていく日々を丁寧に描いた、人間関係に悩むすべての〝ひとり〟のための物語。


正直、すごくキツいドラマだった。

全員の悩みがどれもリアルで、観ていると自分が打ち捨ててきた記憶が引っ張り出され、未だに癒えない傷までもが鈍く痛み出す。

オスメスの区別がないカタツムリになりたいと呟く夜々。夜々の勤め先であるスネイルは、日本語でカタツムリ。夜々の好きな紫色は、赤と青の中間色。女であることについて人1倍悩み憤る夜々が最終話で何気なくステレオタイプな発言をしたことに、いちばんリアリティを感じた。「バーカ!」や声をかけてくる男へのブチ切れも含めて、夜々がとびきり愛おしかったよ。

それから椿の話し方がほんとうに好きで(その前に松下洸平の声が好きなのだが)、「あのね、聞いて、それでね、」椿の長い長い話をずっと聞いていたい。珈琲飲みながら、うん、そうだね、ほんとだねって、聞いていたいよ。


「みんなみたいに、みんなにならなくていい みんなに嫌われてる子なんていない」

この言葉を小学校〜高校までのわたしに届けられたら、どんなに救われるだろうか。泣きながらPCにかじりついて仕事をしていたあのころのわたしにも、届いたら。でも届かないまま今日まで来たから、この物語が刺さるわたしになれた。

大切な人の帰る場所になんて、わたしは相応しくないかもしれない。灯台のようには照らせない。でも、4人とはちょっぴり違う形で、わたしも、いちばんすきな人たちに愛を示していけたらと思う。

好きなのに、苦しくなるから気乗りしなくて、なかなか観進められなかったドラマ。でもほんとうに、会えてよかった。みんなの暮らしをほんの少しだけ覗き見できて、うれしかった。

お邪魔しました。
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