mao

下剋上球児のmaoのレビュー・感想・評価

下剋上球児(2023年製作のドラマ)
4.0
「ザン高のザンは残念のザン」そう揶揄される越山高校で遅咲きの社会科教師として働く南雲。大学まで野球一筋だった彼はあるきっかけで廃部寸前の野球部の監督となるが、隠し通せないほどの重大な秘密を抱えていた。ザン高と南雲の、最高の下克上がいま始まる。


これだよ、これ。悩み、挫折し、泣き、笑い、1歩ずつ着実に成長していく球児たちの姿を見ているだけで、たまらない気持ちとともに涙があふれる。ご都合ストーリーと分かっていても、それでもこういうひたむきさに胸を打たれたいんだよ。

できることなら大人のあれこれはもう少し抑えめで、若い球児たちにフォーカスしまくってほしかった。でも充分面白かったよ。

最終話の根室と、根室姉の涙にこっちまで号泣してしまったな。最初はちょっと控えめだった根室にどんどん自信がついていくのが良い。翔もほんとうに強くなった。ベースを踏み忘れてしまうという面白いドジをやらかしていた久我原が強豪相手にまさかのトリックプレーを繰り出すのが良かった。彼を送り出した山住の「音速で行け!」が好き。

ずっと心残りなのは五十鈴の椎野、どうか幸せになりますように。彼のバックボーンが描かれないことが何よりもリアル。ザン高のみんなは甲子園だけを目指して、〝モブ〟である椎野のことは忘れていくけれど、あの後も彼の日々は続いてる。人生はやるせないよな、でも、負けないで。


強豪野球部出身の親友は今期この作品に見向きもしなかっただろうが、観てみたらいいのにとも思ってしまう(絶対観ないだろうけど)。


「野球たのしい!」その思いだけで少年たちはどこまで行けるのか。青春を通り過ぎてすっかりくたびれた大人になってしまったわたしも、まるでスタンドにいるかのように手に汗握って応援する、そんな最高の下克上を見た。
mao

mao