マグルの血

ハヤブサ消防団のマグルの血のレビュー・感想・評価

ハヤブサ消防団(2023年製作のドラマ)
4.3
都会暮らしに疲れたミステリー作家が田舎の消防団に入る話。

「原作池井戸潤」。この言葉の信頼度の高さ。私はテレ朝ドラマ滅多に観ないんですけど、さすがに観ました。VIVANTやってますしね。


デビュー作はヒットするもなかなか芽が出ない作家が、ひょんなことから父の田舎に足を運ぶとまあ素敵なところ。自然豊か、温かい人たち。「こんな暮らしもいいもんだ」と都会暮らしを捨て移住したところ、目をつけてきたのが地元の消防団。最初は乗り気じゃなかったけど、実際の火事現場で消火活動に当たる消防団の姿を見て感動し、消防団に入る太郎君でした。

1話目の入り口がこんな感じなんですけど、書いてて全然面白そうじゃないなと思いました(笑)ところが、ここまでの見応えが半端ないです。

まず、消防団員が全員いい人。田舎特有の村八分的な雰囲気や、時代錯誤のオラついた勧誘などなく、あくまで紳士的接し、隼地区に来てくれてありがとうと歓迎してくれる姿に自然に心開く主人公。団員を固めるメンバーも全員名バイプレイヤー。この人情感不思議とグッとくるわけです。

そして1話目の消火シーン。さらっと長回しで目を離すことを許さず、さっきまで和やかに過ごしていたおっさん達の目付きが変わって、極限の緊張感の中決死の消火活動と救助にあたるわけです。工夫と役者の熱量で、どっかの民放ドラマのちゃっちい爆発シーンみたいな興醒めなく、手に汗握るスリリングな演出を実現しています。

つまり1話目を観ればもオッケーです。

そもそも消防署と違い、地域の有志で集まった人たちで作った自警団的組織。「俺たちの居場所は俺たちで守るんだ」スピリットは、下町ロケットや陸王にもにた感動がありますね。

そんでもってそれで終わらないのがこのドラマの凄い所で、ここからミステリー、ヴィレッジホラー、カルト、様々な顔が現れます。「思ってたのと違う」をいい意味で食らえます。それもしっかり1話目、1時間の尺の中で。製作陣最強なのか。

で、ジャンルごった煮でもギリギリ整合性保ってエンタメに昇華してんのがすごいです。経済的な話はほとんどない、顔芸もしないですけどね。
山奥ののどかな集落の感じとか、多分古きよき日本の元風景みたいなものに思い入れがあるのかな?忘れてはいけない日本文化を題材という意味で、しっかり池井戸の血統を私は感じました。編集役の山本耕史のあのだらだらしゃべる感じ面白かったな。

あまりネタバレは見ないようにして、騙されたと思って観始めると結構ハマってしまいますよ。

民放のプライムタイムであのネタぶちこむんだすっげーってぐらい結構切り込んでいる。最近観たドラマと比較すると、エルピス、VIVANTくらい攻めてます。

その辺の感想もゴリゴリやりたいけど、それは観た人だけのお楽しみで。

(あの設定で離れちゃった人も多いかもな…)
マグルの血

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