二兵

麒麟がくるの二兵のレビュー・感想・評価

麒麟がくる(2020年製作のドラマ)
4.0
久々に一年かけて視聴した(全話ではないけれど…)大河だった。

一作目からして井伊直弼、その後も日野富子や平清盛など、歴史的には"悪人、反逆者"とされがちな人間を主人公としてきた大河ドラマ。

今回の光秀も反逆者のイメージが強いが、最終回まで通して描かれたのは、真面目で教養深く、武士の棟梁である将軍に仕えることを大事にし、家族や家臣、周りの人々から慕われ、頼りにされる、そして何より争いの無い平らかな世の中を作り、麒麟がくることを願った、一人の武将としての姿だった。

三英傑についても、承認欲求の塊りでサイコパス感ありながらも、十兵衛(光秀)が大好きな信長、表向きは剽軽で人懐っこいが、冷酷で頭が切れる、リアリストな秀吉、後に"麒麟を連れてくる"天下人となる存在でありながら、まだ何者でもなく、光秀と人間同士仲を深める家康。と、新旧の学説を取り入れつつ、意外なキャスティングで斬新な三英傑像を創り出すことに成功していたと思う。

他にも、タフで有能な戦国大名として描かれた今川義元、僧侶から将軍になり、人間味のあるキャラクターが描かれた足利義昭など、これまでのイメージを壊すキャスティングとキャラクター描写のある登場人物が多かった。

脚本家の経歴ゆえか、戦国時代を舞台にした明智光秀主人公のドラマというより、良くも悪くも室町時代後期、室町幕府の終焉を描いた側面が強く、オリキャラ含めた周りのキャラクターのアクが強くて、光秀が狂言回し、使い走りとしてしか描写されてない回も多かったが、最後は信長と光秀、いや信長と十兵衛の物語としてうまく落着したと思う。

合戦シーンが少なめだったのと、例年より少ない話数のせいでダイジェスト感が拭えない回が多く、特に後半駆け足になっていたことは残念。桶狭間の回の出来が凄まじく良かったことを思うと、姉川の戦いや長篠の戦い、そして山崎の戦いをぜひ観たかった。

最終回は、大河史上でも実に静かであっさりした本能寺だったが、その静けさが逆に切なさを際立たせていた。

そしてあの終わり方…光秀は間違いなく"麒麟を連れてくる"男でした。『どうする家康』でまた新たな光秀が出てくると思うけれど、竹中直人なんかの例もあるし、また長谷川博己光秀が見たい。そして是非天海に…駄目かな。
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