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ロリエ・ゴドローと、あの夜のことのmattuのレビュー・感想・評価

4.5
ドラン作品が好きすぎて
全部見終わりたくないので
『たかが…』はまだ未鑑賞。

そのくらいの思い入れがある
監督の、初ドラマ作品。

なかなか配信されないと思ったら
スターチャンネル(有料)なのね。

というわけで
お盆休みの機会に一気見
と言っても全5話だから
あっという間だ。。

で、さすがにドラマだから
映画の2時間分と比べると
ちゃーんと長いな!!
細かいとこ記憶がもう…笑
(結局2周目見てる)

ドラン作品といえば
複雑な『息子』とうるさい『母親』
その確執と愛情…みたいな(雑か?w)
そんなイメージが強かったんだけど
今回はそうじゃなかったね。

ここまでの心境に
辿り着いたんだ…って感じ。

サスペンス的な
仕上がりになってはいるけど
やっぱりドラン監督作品なので
一人一人の心境とか心理を
丁寧に拾い上げて描いてると思う。

そして人間ドラマの部分が
私は好きなのでそこだけ
かいつまんでしまいますが、、

音楽とか、映像とか
サスペンスホラー的な演出も
引き込まれる要素として
良かったと思う。




以下ネタバレあり。





問題だらけの家族。




長男ジュリアン。
世間的に見たらたぶん1番
『うまく生きてる』感じ。

結婚して子供もいて
大学にも通い直してる。

親の葬儀のシーンで
やっぱり親の血なのか
『スピーチが上手いのよ』なんて
噂されて本人もドヤって感じが
なんか皮肉だなと思う。

『トム・アット・ザ・ファーム』の
香りが強い長男ですね笑

ジュリアンの嫁、シャンタル。
どーでもいいけど
名前は(香味シャンタンみたいな)
っていう覚え方をしました…

シャンタルは、ジュリアン曰く
『完璧すぎて抱けない』。

そんなシャンタル本人も
『全て完璧にしたい』と
思っていて、娘の反抗期にも
義母の葬式にも、自分の誕生日会も
夫の兄弟にも、友達付き合いにも
正しく、明るく、強い態度で
ガンガン生活を回していく。

かっこいい。
かっこいいとは思うけど
こんな風にはなれないなぁ。。。

『完璧にしたい』って思う
その原動力はどこからくるの?
なにをもって完璧なの?
そのジャッジは誰の基準?
とか思っちゃう。

長女ミレイユ。ミミ。
ずっと、渦中の人。

『前に進んでる』って
本人は言うけど
あの頃の再現みたいな
プレイを望んで繰り返す…

唯一それを拒否した人と
過ごした夜明け。
あの頃の自分が重なって
明るい顔で朝日を浴びる。
やっと時が進む。

次男ドゥニ。みんなを繋ぐ。
人のために自然と動ける感じ。

離婚しているけど人柄的に
1番問題ないように見える。
でも『片付けができない』。

人を責められない性格の場合は
代わりに自分の事を蔑ろにしまう。

自分の生活を優先したり
自分の気持ちを優先したりせず
当たり前に人の事を
優先出来てしまう優しさのせいで
自分が気分よく生きるために
使っていいはずの時間や
エネルギーがいつの間にか
ゼロになってしまって
結果自分のことを大切に
出来なくなってるんじゃ
ないかなって思った。

末っ子。エリオット。
(ドランの末っ子可愛い)
『長男に怯える赤ちゃん』
(ドランの震え可愛い)

お母さんの最後の希望
だったらしいエリオットは
ジュリアンの影響でお酒&薬漬け。
アレルギーで首はブツブツだし
自分でわざとつけた顔の傷のせいで
とにかくずっと痛々しい。

エリオットの空想も
咳が止まらなくなって血を吐く自分
とか(しかもレストランで)
翌朝目覚めたら吐いて死んでる自分
とか(しかも元カノが発見する)
とにかく自分を憐れな弱い人間
という位置に置き、なおかつ
誰かにそれを認識してもらい
守ってほしいという弱さへの憧れ。

もれなく全員に問題しかない。

でも、お母さん。マド。
どんな問題にも対処し
晩年の回想は幸せそうな
笑顔を見せるマド。

このマドの表情と、
ジュリアンがロリエから
もらったメモの切れ端が
リンクするように感じる。

『それでも・・・・・』

マドの家族に対する気持ちとか
家族や兄弟の間にもこれは
存在する気持ちなんだなって思った。


夜中に他人の家に勝手に
忍び込んだことがキッカケで
とんでもない事件になり
問題児となってしまったミミ。

何年も離れて暮らし
顔も見せないまま。


『それでも・・・・・』


最期にジュリアンを拒んだ。
ここまで何も知られず
むしろヒーロー扱いされて
それに乗っかって家族や世間に
嘘をついて自分を守った。

そんな息子の対応を恥じるマド。
たとえこれが最期だとしても
きっちり叱ることを選んだ。

マドにとっては知らないふりをして
ありがとう…なんて綺麗事言って
死んでいくほうが『悪いこと』だから。
これも母からの最期の愛。


『それでも・・・・・』


ラストシーン。
全てを打ち明けた後。
土砂降りの中ジュリアン。

この土砂降りが
現時点なのだとしたら。
その先は『希望』なのだろうと
思うことにします。
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