めしいらず

透明なゆりかごのめしいらずのレビュー・感想・評価

透明なゆりかご(2018年製作のドラマ)
4.7
町の産婦人科医院に看護師見習いとしてやって来た高校生の主人公の目を通して私たちが見るのは、望まれて生まれてくる生命と、望まれずに人知れず消えていく生命と、惜しまれつつ消えていく生命とが交差する壮絶な生命の現場。生命とは。母性とは。母になるとは。生命はあまりに脆くて儚い。そして人生はあまりに残酷。でも自分の生き死にを打ち遣ってでも守りたいものがあること、あったこと。それを身をもって知った瞬間こそが人の一生の中でいちばん荘厳な場面なのかも知らない。どのような結末になったとしても、祝福されなかった生命は一つもないし、惜しまれなかった生命も一つもない。そのことを知るだけで生まれてきた意味になる。生きていく理由になる。どのエピソードも、どの場面も、あまりにあまりに尊くて、二度目でも毎話打ちのめされてしまった。作者の体験が物語のベースであるらしく、作り事めいた部分が一つもないリアリティがもの凄い。加えて届け手の作品への強い共感があったからこそ、鑑賞者の中にも強烈な共感を呼び起こし得たのだろう。キャスト全員が素晴らしいけれど、清原伽耶と原田美枝子には聖性すら感じるようだった。またCharaの主題歌も例えようのない素晴らしさで毎回涙を誘われてしまう。個人的にはモトーラ世理奈、イッセー尾形、角替和枝の第6話がいちばん好き。あらゆる人に見てほしいドラマだと心底思う。誕生にまつわる事ごとには、心の中にずっと残り続ける深い悲哀と、それすらも軽々と凌駕する圧倒的な幸福があることを教えられた。
再鑑賞。
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