noris

ゴーイング マイ ホームのnorisのレビュー・感想・評価

ゴーイング マイ ホーム(2012年製作のドラマ)
4.0

放映当時の感想。そんなに視聴率悪かったんだっけ。そしてあの小学4年の娘が蒔田彩珠だったか。



視聴率的な大敗に終わったのは、サッカー日本×ブラジル戦で2週目の放映が遅れたからではもちろんなく、是枝監督に、しょせんドラマに過ぎないドラマを撮るつもりが皆無だったからであり、完全に確信犯だったと言える。よくまあ企画が通ったものだと思うが、これもまた、滅びつつあるメディアであるテレビドラマの愉しみである、ということにしておこう。

スタッフリストを見てもわかる通り、完全に映画制作の布陣なのだが、映画としては10時間近い大作ということになる。おびただしい数役者が投入されたのはそのためだろう。視聴率はどんどん下がっていくので、相当心臓が強くなくては撮り続けられなかったと思う。そういう意味でも映画監督でなければ作れなかったドラマと言える。
癖のある役者が次から次へと登場するので、ドラマPR的に目玉であったはずの#山口智子 や#宮崎あおい の影は薄くなる。是枝監督はドキュメンタリーの人だからロングの絵が多いし、音楽で盛り上げることもしないので、尚更である。映画としては豊かさに満ちていると思える場面が続くが、皮肉なことに、テレビという戦場では逆にそれが「薄さ」となってしまう。この差は、見る側が属する時間の速度にかかわる問題である。そのことに対する戦略を監督は持っていなかったと思う。

たとえばテレビドラマでは視聴者の関心が最終回の1話前に頂点に達するように構成されねばならないが、9話の森のクーナ探しは、撮影の困難がしのばれるはするものの、やはりピントがずれてしまっていた。どうせなら、それまでに出てきた役者のほとんどを集めるぐらいのことができれば、また違ったかもしれないが…。

途中から、どのようなラストカットでこの物語を締めるのかが楽しみだった。うっかり冬の夜のベランダに締め出されてしまった#阿部寛 の体を温めるために、山口智子が作ったシチュー(?)の真ん中に三角の赤いニンジンが載っている、という絵は、いかにもではあったが、最後まで見届けた満足感を視聴者に与えたと思う。カットはもっと一瞬でよく、エンドロールとの間にもう少し間があった方が良いように思ったが、いかがだろうか。
noris

noris