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忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段のtubameのレビュー・感想・評価

4.8
門閥の出身でない歌舞伎役者・中村仲蔵が努力と創意工夫によって逆境にも負けず立身出世する物語。


これはただただ面白かった!
落語や講談でも人気の仲蔵の物語。
本作はそれらとはまた味わいの違う独自の路線。導入から歌舞伎的語りで世界に引き込みつつ、種々のファンタジー要素をちりばめる。観ていてワクワクが止まらなかった。


仲蔵役の勘九郎は敢えて言及するまでもなく素晴らしい。本職なので、下手に演じていても周囲とは体のキレも発声も段違いでちょっと笑ってしまうくらい(あれで出世しなきゃおかしい)。
そのくせあまりに仲蔵が自分の才能に無自覚で不思議だけども、明るく真っ直ぐな性格は勘九郎のニンに合っていて応援したくなる愛嬌に溢れていた。七之助との兄弟共演も嬉しいポイントで、彼らが出てると場が引き締まって物語の説得力が違う。

忠臣蔵五段目・定九郎の型は実際には仲蔵一人で完成したものではなく、後世の俳優たちの工夫を経て今に至るのだけど(歌舞伎を愛する者として、多くの人のトライ&エラーのお陰で今日がある芸能だということは強く言いたい)、それはそれとしてお話のクライマックスとしての盛り上がりは充分。


脇役なのに上白石萌音演じる妻・お岸の存在感たるや。ちょっととぼけた性格なのが面白くて可愛らしく、仲蔵との掛け合いが楽しかった。貧乏でも明るい仲蔵なのは岸がいるからだろうなと思わされる。何度も披露する流れるような自然な都々逸の完成度にもびっくりした。朝ドラでも感じてるけど、改めて凄い女優だなあと。


ラストのオリエンタルな雰囲気のコンテンポラリーダンス?も面白くて良かった。上質なエンタメに酔いしれた時間だった。


是非また観たいし、DVD化もして欲しい!!
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