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幽☆遊☆白書のslowのレビュー・感想・評価

幽☆遊☆白書(2023年製作のドラマ)
4.1
【邦画のようで、邦画じゃない。】

人気漫画『幽☆遊☆白書』の実写版ドラマシリーズであるが、正直言って幽白を見たと言うよりも“お金をかけまくった韓国のSFモンスターアクション映画を見た”という感覚に近かった。

ドラマシリーズでありながらクオリティは“映画級”で制作されている本作であるが「日本映画」らしさはあまりない。
かなり海外を意識した作りである。

「妖怪」を妖怪らしく描くことをあまりせず、バイオや洋画に出てきそうなクリーチャーとして妖怪をデザインしていたり、ジャッキー映画のような観客を魅了する華麗かつ爽快なアクション芸にしてたり、おちゃらけたシーンでノリノリの洋楽っぽい歌が流れたり……などなど日本人よりも海外ウケを狙って作られたような印象を受けた。

個人的に好印象だったのは原作そのまんま再現することをやらず、実写だからこそできる部分のみを抽出して実写らしいカタチに変換してたこと。
例えば戦闘シーンは少年漫画っぽくケレン味溢れたド派手にするのではなく、上述したジャッキー映画のような身の回りのモノを駆使して戦うリアリティ溢れるものにしてたり、ドラマパートは実写邦画のお家芸でもあるしんみりとした人情ドラマとして魅せたり、漫画から実写への変換がうまいなと感じた。

ただ服装だけはイジらず原作に忠実だった為、コスプレ感しかなかったのは惜しい。
そこも本作の作風と同じく現代風にアレンジしてこだわってほしかった。

なので、原作愛が強すぎると不満は出るが、実写という違う次元で新しく生まれ変わった「新生・幽☆遊☆白書」として見るべきだなと。

【ここからは制作陣の狙いを勝手に推測してみた】

本作は本来であればもっと長くするはずだったパートを短縮し、たった5話で終わらせてる事から制作陣の“真の狙い”が薄々と見えてくる。

本作は原作ではだいぶあとにやる「仙水編」の設定や伏線、展開を最初からばら撒いて作られている。
それはおそらく今後シーズン2でやるであろう「仙水編」を自然な流れですぐに始められるように最初から混ぜたのだと予想。

「幽☆遊☆白書」といえば、原作から大人気だった暗黒武術会編を今回ほぼカットしたことに多くの原作ファンがガッカリしてるが、個人的にカットしたのは英断だし妥当な判断だったなと。

まず、冷静になって考えてみてほしい。
「コスプレ俳優のバトルになるけど見たい?笑」

今回では敵の人数が少ないのであまり気にならなかったが、敵がみんな人間の姿をした妖怪なので暗黒武術会編を実写でやってしまうと、痛々しいコスプレ仮装大会に成り果ててしまうだろう笑

実写でやるのであれば、妖怪と戦ってた部分を長丁場でやるよりも現代に近い日本を舞台にした異能力バトルが繰り広げられる「仙水編」をやったほうが実写映えする。

そう、
制作陣の真の狙いは「仙水編」の“実写化“なのだ。
私はそう感じた(勝手に納得

海外で『呪術廻戦』が爆発的に人気を得てる今、現在進行形でファンが多い呪術廻戦を実写化すると世界中からバッシングを受けるが、すでに完結してブームも過ぎ去った幽白なら批判も少ない。
なおかつ呪術廻戦のベースになったとも云われる幽白の「仙水編」を実写化すれば海外ウケする未来は目に見えている。

それを実現する為には幽白を最初から描かなくてはいけない。
しかし、原作の序盤を長々とやって打ち切りになれば大損。
それに前半の妖怪バトルはコスプレ大会になるため実写化には不向きだ。
無理矢理再現して不評を貰うと「仙水編」の実写化は夢となって消える。
ならば幽白の序盤は重要部分だけを厳選抜粋して話を短縮し、早いうちに幽白の見どころを見せて完結してしまえばいい。
反響が悪くて打ち切りになったとしても“5話”という短い負担の制作であるからそこまで痛くはない。

…という流れで5話になったと考えればすべての辻褄が合う。

もちろんこれは私の勝手な推測だ。
幽白の暗黒武術会編が個人的にめちゃめちゃ好きだったので、自分を納得させるためのくだらない言い訳としてどうか受け取って欲しい。

【総括】
本作は幽白として見るとやや不満だが、SFモンスターアクション映画としては最高の映像作品に仕上がっているので、幽白としてではなく、高品質なエンタメアクションドラマとしてみることをおすすめする。
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