BK477

どろろのBK477のレビュー・感想・評価

どろろ(2019年製作のアニメ)
4.3
ネトフリにあったので放送当時以来の再視聴

百鬼丸が最初は全身武器庫の、ある種のサイボーグ的な存在だが
体の部位を取り戻すごとに弱くなっていく=生身の弱点が増えていくという手塚治虫のアイディアには驚く。

この2019版では手塚治虫の画の面影はほとんどない。
(琵琶丸や、一部のサブキャラに意匠が僅かに残る程度)
なので、知らない人はこのアニメが手塚治虫だとわからないかもしれない

そして、手塚治虫のテーマといえばまさに「いのち」であり
構成・脚本を担当するのは、命の尊さや儚さといったテーマで強く輝く小林靖子。この采配をした人には拍手を送りたい。
原作漫画とはかなり展開が異なるが、手塚治虫の意志を読み解いた小林靖子が2クールでたっぷりと、丁寧に紡ぐ物語は逸品と言えよう。

少数を犠牲に多数の幸福を得る社会は、恐ろしいのである。
その犠牲が、明日は我が身となる、恐怖の社会なのである。
しかし、
一人の命と多数の命を天秤にかけたとき、多数の命を取らねばならぬ、
これもまた、生命の本能なのである。

自分の幸せのために多数の不幸を強いる百鬼丸、
多数の幸せのために1人の犠牲を強いる醍醐、

どちらが正しいのか、どちらも間違っているのか…

命の重さ、人の道、真剣にそれを問うている作品。

なお
本作はどどろの声優(中学生の子役)演技にのっかっている作品だ。中盤までは百鬼丸が話せないので、どろろのセリフが大半を占める。が、この子役(鈴木梨央)の演技力がまあ素晴らしく、彼女の迫真の演技によって見事に作品は支えられている。 子役一人の演技に作品が乗っかっている構図は、どろろという作品のテーマに合致しているから面白い。
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