さんかく

啄木鳥探偵處のさんかくのレビュー・感想・評価

啄木鳥探偵處(2020年製作のアニメ)
4.2
探偵というフィクション要素が入るものの、明治という時代と文学の薫りがする印象深い作品でした。見どころは啄木に寄り添い尽くす京助。第十首、本当に良かったです。

主人公の啄木は気持ちいいくらいにクズな性格です。自分勝手な彼に嫌悪感を持つ人は多いのかも。ただ、不思議と憎めないキャラで。彼がこんな振る舞いをする背景を想像すると嫌いにはなれないのですよね……。(哀しい最期を知っているというのもありますが。) また、こんなにいい加減な生き方もありえるものなんだと不思議な勇気をもらえる側面もありました。

そしていくらクズでも啄木は、歌の分野では天才なんですよね。ここが肝です。だから京助が彼の才能に惚れて、周囲に呆れられるほど尽くすのも、理解できなくないです。自分が憧れてやまない分野で、天賦の才を持つ「推し」が同郷の友人として側にいる。私財をなげうって支えたくなる気持ちも少し想像できます。

この作品をきっかけに調べたところ、2人の交流は史実としても深かったことも初めて知り、(実際に下宿に同棲したこともある)、本当に生きていた彼らに非常にに興味を持ちました。同時に、遠い明治時代を、前よりも身近に感じるようになりました。めちゃめちゃ影響受けました(笑)

最後に、啄木と京助役の声優お2人の熱演が素晴らしかったことを付け加えます。啄木はただの嫌なやつに見えず、京助と啄木の普通じゃない関係性も自然に見えたのは、声の演技の力も大きかったと思います。
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