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四月は君の嘘のAPOのレビュー・感想・評価

四月は君の嘘(2014年製作のアニメ)
4.3
あ、炭治郎の声だ。
これがファーストインプレッションだったのは置いておいて、また素晴らしい音楽青春アニメに出会えて光栄に思う。
昔、姉のバイオリンを少し触らせてもらったが難しくて直ぐに断念した思い出が蘇った。


ピアニストとバイオリニストのアンサンブル。

中学生とは思えない演奏をする有馬公生は幼い頃から賞を軒並み総なめしてきた実力者。病気で弱りながらも厳格な母親からの指導で力をつけていった彼は、11才の時に母親との死別のショックからピアノを弾けなくなる。以来、ピアノと正面から向き合えなくなった中で不意に出逢ったのが同学年バイオリニストの宮園かをり。この出会いが公生の音楽の道に鮮やかな色をつけてくれる。宮園かをりに秘められた真実を知った時、本タイトルに込められた想いが心に突き刺さる。


クラシック音楽の迫力や深淵を覗かせてもらうことも出来て、ショパンという人物の曲が更に好きになった。

ピアニストの同世代のライバル関係の描写も丁寧だった。本当に中学生の演奏なのかと疑わしくなるほど凄く迫力ある演奏をする。
実写版は以前観たことがあるが、再度観たくなった。

(以下ネタバレ含む)





第6話
かをりは明るく元気はつらつとした女の子。
けれど、実は繊細な心の持ち主で他人の痛みがよくわかり寄り添える優しさを持つ。
第6話を観終わったところだが、気になった点がある。それはかをりの涙多用問題。キャラクター上分かるのだが、結構な頻度で涙を見せるかをり。物語上凄くバランスの取れた彼女のキャラクターの涙はもう少し貴重な物として扱ってほしい。毎話観れてしまう彼女の涙より、ここぞという時の涙の方がより美しく重みが出ると思ってしまった。



第7話
「気が滅入っている時は、頬杖をつくといい。腕は役に立つのが嬉しいんだ。」
Charlie Brown の言葉を公生に伝えたかをり。

第8話
ショパン「エチュード イ短調 作品25-11 Winter Wind 木枯らし」
井川絵見の演奏が素晴らしかった。


第13話
バイオリンのガラコン当日、姿を現さないかおり。公生は伴奏者として一人で舞台に立つ。だが、彼は伴奏者というより主役ピアニストであった。


第21話
東日本ピアノコンクールにて、有馬公生の演奏曲。
ショパン「バラード 第1番 ト短調 作品23」
優しく悲しげな音が会場を包み込む。関わってくれてる人全てに向けて、演奏家として応える公生の姿は輝いていた。心情はケイオスの中で、音で表現する凄さ。


第22話
公生が希望する学校へ進学するための切符を得るのに大事なコンクールの本選。同じ日にかをりは命を懸けて手術を受けている。
空想の中、いや公生にとっては現実の音の中での宮園かをりとの共演は待ち望んでいた絵だった。もう観られないんだろうなと残念に思っていたが、私は最期に2人の共演が見ることが出来て嬉しかった。ナイス脚本演出だった。にしても美しい描写に美しい音のマッチングは幸福度増した。と同時に、予想内の訃報が待ち受けている虚しさに包まれる。観ているこちらまで公生並みに心情がケイオスになった。


上記にて、かをりの涙多用問題とかなんとかほざいていた能無しがいるが、前言撤回したい思いで一杯。全話観終わってから振り返ると、その都度涙せずにはいられないかをりの気持ちがよく分かった。残された限りある少ない時間の中での思いが涙として表れるのは何もおかしくなかった。


かをりが公生に残した手紙は全ての真実を語るものであった。幼き頃にコンクールで観た公生の影響で、かをりはピアニストではなく、バイオリニストとして彼との演奏を夢見ることになる。自身の病気が原因で、もう先が長くないことを知ったかをりは何とか公生に近づく。天真爛漫ではつらつとしたかをりが好きなように自分らしく余生を全うしていたことを知った公生。そして公生の親友である渡のことが好きなのではなく、公生のことが好きなのだと想いが綴られていた。
音楽性と恋愛性の絶妙な具合が、私にはハマった。そこに死別という大きな別れが入り交じり、幼い頃からの友情が根っこで支えているバランスの取れた良作だった。

宮園かをりの病名が最後まで明かされなかった。見逃したかと思い、見直したが分からなかった。身体をうまく動かせなくなってかなりの重い病気で勝手に考えついたのはALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病指定されているもの。WEB上では筋ジストロフィー、脳腫瘍や白血病といった予測もされている方々もいた。何にせよ、まだまだこれからの才能ある若者の抗えない死や、それを支える周りの人達を観るのは辛過ぎる。だが、同時に生きるヒントや勇気を多く得られる。

人の心に寄り添う大切さを教えてくれた。
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