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ユリ熊嵐のGTのレビュー・感想・評価

ユリ熊嵐(2015年製作のアニメ)
5.0
 幾原邦彦監督の「ウテナ」、「ピングドラム」と見てきたので同監督のこれを。両作品とも魂を震わせるほどの傑作だったので非常に期待して視聴したのだが、これも傑作!女性同性愛である「百合」がテーマになっているためか少々エロティックな描写が多目かつ超難解なストーリー故万人に勧めづらい内容ではあるものの、ハマる人はトコトンハマる作品だ。
 「ウテナ」も「ピングドラム」も、その前衛的な演出が特徴的だが、本作でもそのセンスは顕在だ。どぎつい色をした学校のデザインやシャレた制服デザインの時点で、個人的には既に大興奮。時系列を何度も行ったり来たりさせ、話を複雑にさせる手法は「ピングドラム」と一緒だ。本作は「萌え」的要素が非常に強く、サービスシーンっぽい部分もかなり多く存在する。特に体に生えた百合の花の花弁を舐めるシーンは、中々に攻めた表現だ。しかしこういうエロティックなシーンも下品さを感じさせず、むしろ何か象徴的、暗喩的で謎めいた雰囲気を纏っているから不思議だ。他にも「ク〜マ〜、クマショック!」をはじめとする変な効果音や、「断絶の壁」「透明な嵐」といった幾原節が炸裂してるちょっと中二っぽい用語まで、とにかく癖になる感じだ。
 全12話、つまり1クールしかないためか、話の展開が早く、難解なストーリーがさらに難解になっている印象がある。直線的に進まないストーリーも相俟って、何かこう現実感のない、ふわふわとした浮遊感を感じる。「ウテナ」も「ピングドラム」も、最終話のあまりの意味不明さと突飛さに思わず笑ってしまったんだが、このアニメもしっかりこちらを置いてけぼりにしてくれた。だがただただ意味不明なだけじゃない、意味不明なのに心を揺さぶってくれる「勢い」というか「魂」みたいなものを感じるから不思議だ。きっと幾原監督は、何か伝えたいことがあるがそれを言葉にすることはできず、こういう複雑な形式でしか伝えることができなかったのだろう。
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