ゆず

スーパーカブのゆずのレビュー・感想・評価

スーパーカブ(2021年製作のアニメ)
3.6
「トゥ トゥ トゥットゥットゥ♪」で始まるオープニングがとてもワクワクして良い。
…のだが、並木道の四季の移り変わりで、葉が黄色く色付いた秋(落葉樹)から葉に雪が積もった冬(常緑樹)に切り替わることに気付いてから気になってしょうがない。
そういう違和感は本編中にも存在した。"春をつかまえに"遠出しようというツーリングなのに、途中の道程が緑の葉が茂ってる背景ばかりでなんだか春とか夏の景色に見えるなど…。
めんどくさい視聴者で本当に申し訳ないと思う。アニメでまるで本物みたいな精緻な背景を見ると、ロケハンで撮った写真を加工・トレースしただけじゃね?と勘繰ってしまうし、たぶん実際そういう例もあるんだと思う。少ない予算、限られた時間の中での工夫なんだろう。
本作でいえば校舎の遠景などがリアル過ぎて疑わしかった(笑)
ただ第1話冒頭から静謐な空気感とか地味な毎日などの雰囲気を出していたので、とにかくリアル路線で背景に手間をかけて描いたのかもしれない。何か、スタッフが描いたことが伝わるような何かが背景絵にほしいと思う。

なんで背景の話してるんだろう…。

山梨県北杜市が舞台。ひとりぼっちで生きてた高校生の灰色の毎日が、ある日スーパーカブと出会ったことで色付く。これは半分は比喩ではなく、基本的に彩度を落とした映像が続き、バイクに乗ったり、何か新しいことに出会ったりすると色が鮮やかになる、という演出が毎話あった。(彩度高いのと彩度低いパート、どちらも個別に色指定してるんだろうか…?それともどちらかで統一して、後から彩度を変えている?)
この演出が本作の最大の工夫だったと思う。感情表現が控えめな主人公の小熊の気持ちをよく表していた。

私はバイクについてはさっぱりなんだけど、乗り物をゲットすることで行動範囲が広がり世界が広がる楽しさはよく分かる。さらにカブの場合、けっこう自由にカスタマイズできるみたいで、そういうのも良いなと思った。
ただ、大いなるカブには大いなる代償が伴う。寒さ対策を施すとオジサン臭くなっていくし、装備を揃えるのにもお金がかかる。働いて給料もらうようになると一気に自由度が高まるが、自由には常に支払いが伴うということを教えてくれるアニメ(?)
でも金欠を嘆きながら椎ちゃんの店に入り浸っているのはどういうことだ…。

ツッコミどころは個人的にはあるんだけど、逆に言えば些細なツッコミくらいしか貶すことができなくて、大枠では良作って感じの雰囲気を漂わせている。
なんなら女子高生が主人公でなくとも、ふつうのオジサンたちがカブで雪山で遊んだり、桜を見にツーリングしたりしても全然面白そうなアニメだと思う。
オジサン版のタイトルは「おっさんずカブ」で。
ゆず

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