レインウォッチャー

化物語のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

化物語(2009年製作のアニメ)
5.0
「空から女の子が降ってくる」。

そんな余りにもあんまりな始まりのこの作品は、ずっと脳と心臓に刺さって抜けないホチキスの針である。

小説を読むという感覚をそのまま映像に置き換えていく途方もない試みが、恐ろしいほどアバンギャルドで悍ましいほどポップに結実した。
異常な台詞量、奇妙なアングル、扇情的なキャラクター。

アニメ…に限らず映像コンテンツって、こんなに面白いものなのか。面白く化けられるのか。そう思わせるに十分だった。

結果、戦場ヶ原ひたぎは今でもベストヒロインの一人であり、「〜けど」を頑なかつ自然に「〜けれど」と書いてしまう程度には後遺症が治らない。声優やキャラソンの魅力を知ったのもこの作品だった。どうしてくれるんだ。まこと憎らしい。

ストーリーはある意味ではシンプルで、特にこの1stシーズンは「ベタなラブストーリー」として一貫している。
3話程度でメインヒロインが交代し、それぞれが悩まされる「怪異」の問題を解決していく…というオムニバス的な形式ながら、底にはひたぎとの関係性の進展が常に流れていて、行き先を見失わず感情がしずしずと積み上がっていく。

怪異に対しての民俗学的な理解・アプローチも共感できるところだった。すなわち、人が信じて必要とするからそこに「在る」。
それらは登場人物の誰もが自分にすら騙して隠している本心の鏡像で、10代の揺らぎと絡めることで巧く描いている。

あれがデネブ、アルタイル、ベガ。
夜空に三点を探すとき、きっとこれからもあのイントロが聴こえてくる。

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こんなことを書いていながら、原作ノベルは未読な不届者である。
正確にはトライしたことくらいはあるのだけれど、自分の中ではアニメのイメージで世界が完膚なきまで完全に完成されているため、原作すら入り込む余地がないのだ。