じ

戦闘妖精雪風のじのネタバレレビュー・内容・結末

戦闘妖精雪風(2002年製作のアニメ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 中尉の片想いは雪風にどう映ったのだろう。
 人と機械の友情を描いた作品はたくさんあるし、好きだ。『チャッピー』『ウォーリー』『タイタンフォール』。映画、アニメ、ゲームに関わらず、概念そのものが違う二者に関係を見出すロマンは、いつも僕たちを魅了する。そこに感じるブロマンスにも似た切なさの正体を、この作品に見たのかもしれない。
 深井は戦うために作られた戦闘AIに何を求めたのだろうか。深井は決してサイコパスではなく、環境によってパーソナリティを歪めた人間だ。ブッカーとの友情も、温もりを求めた悲しげな目も、雪風への執着も、全て彼が求めたものの産物だ。
 雪風は事を動かす度に『YOU HAVE CONTROL Lt. FUKAI』と呼びかける。
次はどうする?
決めるのはお前だ。
私はついていく。
 この一文に深井も僕も意味を見出す。その意味とは、雪風がそう提示した訳ではない、僕らがそう言ってほしかったという願望の写鏡でしかない。それでも、深井はそう言って欲しかった。それだけでよかったのだ。理解とは自らの願望に基づいてしか成り立たないものだが、最期の時を雪風に捧げるに値するほどの価値を見出した。それほどの価値を、僕らは何かに見出せるだろうか。
 同じように、雪風も深井との最期を選んだ。雪風はなぜ自分だけでも生き残ろうとしなかったのか?同型機にメモリとデータを転送し、そのまま自らを破壊する判断さえ厭わない回路を持つ雪風が、なぜ生き残る道を選ばなかったのか。基地も戦闘もAI無しでは運用できない人間達は、AIが命をかける戦場に価値を見出さない。雪風はなぜ、深井にだけコントロールを渡したのか。
深井だけが、雪風を信じていた。
それだけで、充分だったのだ。
じ

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