――すべてのかつての天使たち とくに 安二郎 フランソワ アンドレイにささぐ――
17歳くらいの頃にTSUTAYAで衝動借りして、なんて詩的で美しい映画なんだ、と感動したのを今でも覚えている。小津、ト>>続きを読む
北欧の金髪美少年とはこれほどまでに透き通った存在なのか……と息を呑んだ。そして邦題と映倫に対して憤怒と落胆を覚えた。
12歳の少年オスカーはクラスメイトから虐められていることを親に言えず、ひそかにオ>>続きを読む
清末の上海、高級遊郭の妓女と客として訪れる名士たちの物語。徹底した作り込みの屋内セットと長回しを連続させる撮影技法により、世紀末の怠惰で享楽的な空気が全編に流れ、もはや映画というよりも、自分が遊郭の使>>続きを読む
伝説のカストラート“ファリネッリ”ことカルロ・ブロスキが、今ここに蘇る。
バロック文化が円熟を迎えた18世紀初頭、オペラの街として名高いナポリに生を受けたカルロは、天使の歌声を持つボーイソプラノだっ>>続きを読む
和製B.B.と謳われた天性のファム・ファタール、加賀まりこ20歳の悪魔的な美しさたるや!
60年代ヨコハマの街並みやファッションなど、舞台背景は現代女性から見た「レトロかわいい」要素で溢れているが、>>続きを読む
――わが恋の終わらざる如く この曲も終わらざるべし――
シューベルトの名曲『未完成交響曲』はなぜ未完成なのか? という永遠の謎をロマンティックに描いた伝記風映画。
家賃を滞納していたところを質屋の娘>>続きを読む
谷崎潤一郎の文章には連綿と紡がれていく錦糸のような艶めかしさがある(と個人的に思っている)が、そこに増村保造のリズム感・テンポ感が加わることで、さっぱり気が付かぬうちに卍固めの愛憎の渦に絡めとられてし>>続きを読む
無性に観たくなったので約5年ぶりに再視聴。当年の最もセクシーな男(ピープル誌)に選ばれただけあって、95年のブラッド・ピットは血気盛んな若手刑事ミルズにぴったりの配役。やたらFxxK言ってたのも青臭く>>続きを読む
邦題だけ見て古典ホラーかと思っていたら全然違った。
生まれつき足が悪いステラ・マリスは、叔父のブラント卿夫婦の家の一室“ステラ・マリスの王室”で、世間の汚い部分から徹底的に隔離されて暮らしている。そ>>続きを読む
黒澤監督自身が見た夢をもとに作られた、8本の短編からなるオムニバス。なんとなく前半は泉鏡花、後半はSF御三家のような雰囲気を感じる。
特に好きな話は『桃畑』と『鴉』。五組の雛人形による荘厳華麗な舞い>>続きを読む
ギリシャ神話の詩人オルフェウスとその妻エウリュディケの冥府下りをモチーフとした、ジャン・コクトー自身による戯曲のリメイク作品。“氷のように熱い”マリア・カザレスの瞳が印象的だ。
生と死は常に隣り合わ>>続きを読む
エイリアンやゾンビによるパニックホラーではなく、身近な生き物である『鳥』がいきなり襲ってくる恐怖。それもカモメやカラスやスズメといった、日常的によく見かける鳥なのが更に怖い。徐々に増えていく鳥の影、流>>続きを読む
トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』とシェイクスピアの『マクベス』を脚本のモチーフとし、さらに副題にはワーグナーの『神々の黄昏』を沿え、ナチの台頭を前に製鉄王エッセンバック男爵一族が互いに破滅>>続きを読む
何年か前にBSで観たのが初。先日のアラン・ドロンの引退発表を受けて本作を思い出し、あちこち探してようやく観ることができた。名監督3人のオムニバスで、初見時は第2話が一番好きだったのだが、改めて観るとや>>続きを読む
主人公は精神病棟の小間使い。彼は自分の虐待によって妻を狂わせてしまい、その贖罪として妻が入院している病棟で働くことにしたのだった。
ある日、主人公の娘が母に婚約の報告をするため面会に訪れ、父とも久々の>>続きを読む
初めて観たのは中学生の頃。当時『ポーの一族』が大好きだった。おかげで新旧どんな映画を観ても、未だにレスタト役のトム・クルーズが一番好きだ。吸血されたい。
200年の時を生きたヴァンパイアのルイは、サ>>続きを読む
篤い信仰心と法律家としての信念から、国王に真っ向から対立し続けた男、トマス・モアの一代記。元々は戯曲の予定だったためか台詞のひとつひとつが格調高く、箴言のように心に響いてくる。高校世界史の復習をしてい>>続きを読む
派手なアクションは排除された、冷静なスパイ映画。とはいえ決して地味なストーリーではなく、誰がソ連との二重スパイ“もぐら”なのかを探り合う中で、“サーカス”を取り巻く複雑な人間模様が展開されていく。
《>>続きを読む
これは自分の中の「常識」を取っ払って、「何も知らない」状態になって観るべき映画だと思う。現実社会と比較すればするほど気持ち悪くなる。もっとも、この家の父親はその気持ち悪さを徹底的に排除しようと動いてい>>続きを読む
ドラキュラ伯爵の眼光に射抜かれても正気を保っていられるのは、よほど信仰心か自我の強い人間だけだろう。白黒映画だが、あれは紛れもなく鮮血の色だ。その他ドラキュラの配下たちも目の演技が素晴らしい。
マッ>>続きを読む
サーカス団を舞台に、本物の『フリークス』=異形の者たちを俳優として起用した衝撃作。登場するのは侏儒やシャム双生児、四肢欠損(江戸川乱歩の『芋虫』を彷彿とさせる)など様々。
ALI PROJECTの楽曲>>続きを読む
先日フェリーニ×ヴェネツィアの『カサノバ』をレビューしたので、今回は対を成す(?)ヴィスコンティ×ヴェネツィアの『ベニスに死す』で。本来ならビョルン・アンドレセンの美貌だけで満点を付けたいところだが、>>続きを読む
万能人にして稀代の性豪、ジャコモ・カサノヴァの豪快奔放な生涯を描いた、約2時間半にも及ぶ大作。猥雑と驕奢のギリギリのラインで“人生は祭だ”と叫んでいるような世界観である。
時は18世紀、ヴェネツィア>>続きを読む
115年前の人々が思い描いた摩訶不思議な月世界に、いろんな意味で驚かされた。
アポロ計画の遥か前に製作された映画なので当然とはいえ、スペースシャトルの代わりに人間が入った巨大な砲丸を打ち上げて月面に>>続きを読む
原題は『INNOCENCE』。
どこからか流れてくる七芒星の刻まれた棺桶、その中で眠っていた少女イリスは、深い森の奥にある少女だけの寄宿学校「エコール」で目を覚ます。
この不思議な学校では、およそ6>>続きを読む
SF界だけにとどまらず、20世紀のカルチャー全体に影響を与えたと言っても過言ではない、人類史に燦然と輝く傑作中の傑作。
本作が公開された1927年、中国では蒋介石が南京事件を起こし、ロシアではトロツ>>続きを読む
医者に「14歳、17歳あたりは特に情緒不安定になりやすい」と言われたことがある。
そんな13歳から17歳の5人姉妹を描いた、ガーリーの伝道師ソフィア・コッポラの初監督作。
物語はかつて姉妹と親交のあ>>続きを読む
「これは演劇です!」とでも言わんばかりの舞台風演出が良くも悪くも斬新。アーロン・テイラー=ジョンソンの軍服姿は最高。
原作は既読だが映画は初。おおまかなストーリーは「不倫」の一言で片付くものの、禁断>>続きを読む
サイダーの泡の中に溶けていく薬指の先端、あまりにもぴったり足と融けていく革靴。かつて女子寮の浴室だったタイルの上で、主人公と標本技士はひとつになる。そして――
小川洋子の初期作品が大好きなので映画も>>続きを読む
はじめにお詫びを申し上げると、自分が原作を好きなあまり相対的に低評価になってしまった。純粋に映画として観れば、「大人になっていく少女とロリコン執着男の悲劇」として、キューブリックの美しい画面を十分に楽>>続きを読む
ドイツ表現主義の嚆矢となった怪作。
ジョルジョ・デ・キリコやアンドレ・ブルトンの作品に迷い込んだような、歪でシュールで不気味な影と渦の美術により、観客までもが夢遊病に陥ることだろう。
過去に神経症と>>続きを読む
『禁じられた遊び』とは一体なんなのか。
子供の純粋無垢な背信か、大人のエゴで行われる戦争か。
機銃掃射で両親と愛犬を失った少女ポーレットと、農家の息子ミシェル。未だ死を理解していないポーレットに、年>>続きを読む
なによりも映像、特に金色が美しい!
エマ・ワトソンの気品と芯のある演技もとても素敵でした。だんだんと人間味が溢れていく野獣もとい王子も可愛くて堪りません!瞳が綺麗すぎる!
お城の調度品や使用人の服装>>続きを読む
これぞまさしく潜水艦映画の金字塔。
物語の前半は意気揚揚と進んでいく。しかし、パーティでの羽目の外しっぷりも、カメラに向ける屈託ない笑顔も、『遥かなるティペラリー』を歌う姿も、結末を思うと切なくて(>>続きを読む
連続幼女殺人事件を引き金に暴かれる、人間心理の闇。
『山の魔王の宮殿にて』は、本人さえ抗えない衝動=悪魔の暗喩だろうか。盲目の風船売りがキーマンとなるのも、我々「一般人」では日常に潜む危険を「見抜け>>続きを読む