ジャンさんの映画レビュー・感想・評価

ジャン

ジャン

映画(316)
ドラマ(0)
アニメ(0)
  • List view
  • Grid view

エデンより彼方に(2002年製作の映画)

-

ジュリアン・ムーアとデニス・クエイドを切り返しで撮るときの2人の距離が、レストランでのムーアとデニス・ヘイスバートのテーブルを介した幸福な距離を際立てている。トッド・ヘインズの映画はショット・リバース>>続きを読む

壮烈第七騎兵隊(1941年製作の映画)

-

話としては英雄(ヒーロー)の人生とそれを支える内助の功としての妻というありきたりのものだが、それでも(それだからこそ)感動してしまうのがハリウッド映画の不思議。放浪者のように軍隊にやってきた主人公が、>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

-

自然の法則を誰よりも了解する主人公に対しても自然は容赦なく牙を剥くが、それは実のところ(現在でありつつ過去と未来を示す足跡=徴のように)予示された神の意志であり恩寵でもある。
ゴダールは『イメージの本
>>続きを読む

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

-

全体に地味な話とアクションで長い印象はあるが、集落が襲撃されるシーンやクライマックスの濁流シーンのアクションを出来事の内側から捉えるショットは楽しかった。カリスマ性ではなく普通の主人公がしっかり悩みな>>続きを読む

ミッシング(2024年製作の映画)

-

良くも悪くも石原さとみの頑張りを見る映画のようになっており、もちろんそこに賛辞を贈りたい気持ちもあるのだが、もっと石原さとみのポテンシャルが活きる役があるのではという気がした。最後に涙を見せる青木崇高>>続きを読む

合衆国最後の日(1977年製作の映画)

-

基地爆破、ミサイル発射、文書公表を巡る会議など、サスペンスの目白押しで退屈しないつくり。ホワイトハウス、ミサイル基地、国防総省指令室の3ヶ所をスプリットスクリーンで同時的に示していきそのサスペンスを高>>続きを読む

理由なき反抗(1955年製作の映画)

-

若者同士の喧嘩やチキンレースは高台や崖といった高低差が支配し、家族の諍いも階段を使った斜めの視線が支配する。
赤いコートや緑のジャケットを着るナタリー・ウッド、赤いジャケットに濃紺のジーンズのジェーム
>>続きを読む

街の灯(1931年製作の映画)

-

チャップリン映画のスラップスティックとヒューマニズムが一番いいバランスで配合されている。(これが『ライムライト』に至ると、ヒューマニズムが強すぎて映画全体が弛緩することになる。)
レフェリーを巻き込ん
>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

-

長旅の飛行機で見たので記憶が定かでないのだが、綾野剛という役者の人たらしな感じが活きていてよかった。こういう映画では大体子役が目立つものだが、綾野剛の魅力が強すぎる。

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(2019年製作の映画)

-

この話をトッド・ヘインズが撮る意味が正直見当たらない。特に前半部はあの膨大な資料をどう捌いたのかもよく分からないし、主人公の突破口が数回偶然の発見に基づくものになっていたり、主人公をどういう観点(パー>>続きを読む

音楽(1972年製作の映画)

-

フロイトの自由連想法とは全く違うし、錯語もとってつけたようだし、三島の原作はこうじゃないはずと信じたいが、この適当な感じもなぜか魅力になる不思議。

遊び(1971年製作の映画)

-

男が「よおし、抱くぞォ!」と言って結ばれ、衣服を脱ぎ濡れた白い下着姿で空を見上げ、頼りない船尾に捕まり不器用にバタ足する男女を見ていると、もはや苦笑を通り越してにんまりとしてしまった。

しとやかな獣(1962年製作の映画)

-

オープニングクレジットの間、夫婦と思われる男女が二人で家具を移動させる息のあった動きを遠くから捉えるショットを微笑ましく見ていると、それが後に来訪者に質素な暮らしを装う企みの動作であることが分かる。こ>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

ブランドンの新作ということで期待して見に行ったが、意外にも軽めのホラーという印象。本来の自分かクローンか分からなくなるとか(このモチーフはセリフであっさりとすかされる)、主人公が劣等感の奥深くに沈潜し>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

-

何よりクリストファー・ウォーケンを見れて嬉しくなったし、ティモシー・シャラメの線の細い体格とその裏に芯がありそうな感じが存分に活きる役でそこが一番の魅力だと思う。
顔の寄りのショットが多かったり、砂漠
>>続きを読む

情熱の航路(1942年製作の映画)

-

母親に抑圧された女性が自らの意思と選択を獲得する話という意味ではもちろん、男女が恋愛ではなくフレンドシップ(のようなもの)で結びつくエンディングの先進性には驚いた。男がタバコを2本口に加えて火をつけ、>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

-

水面の波紋とそこをゆっくりと走る船のリズムの調和(薪を割る動作と布をはたく動作のリズムも?)に身を浸す幸福。ミルクを運ぶ女の子に赤いワンピースを着せるなど、随所のちょっとした工夫に心を掴まれた。

落下の解剖学(2023年製作の映画)

-

一生懸命に工夫して作った脚本で押し切った映画という印象だが、この内容で2時間半はさすがに長すぎると思う。個人的には、主人公の女性をもう少し突き放した視点で語るというか、殺したかもしれないと薄ら寒くなる>>続きを読む

季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

-

活気ある過去と静寂に満ちた現在の対照や、かつての出来事への郷愁はそれだけで大好物だが、人物たちを平等に切り取っていくフレーミングに何より癒される思いがした。
『ペイン・アンド・グローリー』や『とらわれ
>>続きを読む

ダニエル・シュミットのKAZUO OHNO(1995年製作の映画)

-

薄く水が張った地面を彷徨するように踊る。そこに重ねられる水の音の付加をどう考えればよいのか。途中で挟まれる自宅でメイクなしの素顔で踊る姿をどう考えればよいのか。

デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

-

現実に過去が侵食してくるというと、シュミット映画の無表情で緩慢な動きをする男女たちの夢幻的な存在様態はそもそも通俗的な時間を超越していたじゃないかと思うし、今回もそれを観れるんだろうと期待して行ったの>>続きを読む

パズル(2013年製作の映画)

-

さすがに早回しは奇を衒ってる感があるなあと思っていたところに、怒り狂った高橋和也が屋上に行くあのショットは笑った。狂った野村周平と狂った高橋和也の戦闘からの二人仲良く落下という展開も良かった。
「一回
>>続きを読む

Helpless(1996年製作の映画)

-

バイクに乗る人物をロングショットで、時にロングの横移動で撮る画の素晴らしさ。電車に乗っている片腕の光石研も、ビール瓶を落とす、瓶が転がっていく、それを足で止める、これだけで傑作に違いないと思わせる。喫>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

-

男性に対する嫌悪とその裏側にある攻撃性をベースにしたホラー。身内の転落死、それをきっかけにした森への移住、鹿の登場など、『アンチクライスト』を連想するものの、テーマとしては全く別。
縦に真っ二つに切ら
>>続きを読む

ゴダール・ソシアリスム(2010年製作の映画)

-

馬やらロバやらアルパカやら(動物詳しくないから正確には分からない)動物が多ければ、子供のショットも多いのが意外。帽子を隠しておきながら堂々と知らないと言ってのけるいたずらっ子ではあるものの、子供が母親>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

-

ホテルの部屋の窓近くに女性が立っており、窓から入る光を受けて女性の影が左に延びている。窓際に立ってタバコを吸っていた男性は、近くのベットに座りカメラに黒い背中を見せたかと思うと、そのままベッドに横にな>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

-

冒頭、妻が無駄のない動きで家事を一つ一つこなしていく様子を固定ショットで捉え、しかも今度は朝食のパンとサラミの支度をする妻と娘の息のあった連携を真上横移動のカメラで捉える。『少女ムシェット』におけるム>>続きを読む

神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版(1950年製作の映画)

-

再見。冒頭、雨が降る中、画面の奥から僧衣を纏った男たちが手前に歩いてくる、その移動の画だけでなぜか幸せな気持ちになる。その理由は、フランチェスコが他の修道士たちと等価に映し出される「集団の映画」として>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

-

文学の引用や女優らの写真、そこに添えられるゴダールの言葉や声、そして静止画の連続に軽やかに差し込まれる『アワーミュージック』の一場面。ゴダールにより接続される数々の素材が呼応しあい、あるいは反発しあう>>続きを読む

その夜の妻(1930年製作の映画)

-

銀行強盗のシーン、拳銃だけを捉えたショットの切れ味が素晴らしい。カメラを横移動させて捕えられた男たちを映していく演出も、後期の小津映画を考えると贅沢すぎるショットだと言える。両手に拳銃を持つ妻の頼りな>>続きを読む

ディア・ハンター(1978年製作の映画)

-

ベトナムに行く前の結婚パーティー兼送別会の一連のシーンが良かった。ぐるぐると回りながらダンスする男女は、『天国の門』の素晴らしい円環のダンスシーンをしっかりと準備している。ベトナムのシーンも大木に捕ま>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

-

ペトラが終始部屋の中に閉じ込められた室内劇である一方、彼女はさらに鏡などのフレーム内フレームに閉じ込められている。しかし最も痛々しいのは、終始セリフを奪われているだけでなく、被写界深度の深い画面で後景>>続きを読む

赤い河(1948年製作の映画)

-

オープニング、インディアンにジョン・ウェインが拳銃を放り投げると、インディアンがウェインに飛びかかり、2人は水中で揉み合うことになる。クライマックスも、銃で撃ち合う展開になるかと思いきや、ウェインはモ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

不条理受難劇マニアとしては面白く観れた。特に第3幕では、ホアキンの未来まで幻視するアニメーションとのマリアージュが見る側の現実感覚を特段に失調させる。
最後に急速に親子問題に回収されていくが(伏線は張
>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

-

幸福な映画。上白石萌音と松村北斗の人間的な魅力を引き出す演出の妙。もちろん役者としての素晴らしさも言うまでもなく、特に『舞妓はレディ』で圧倒的な新人俳優としてスクリーンに登場した(その前から少しの映画>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

「特殊性癖」について優等生が一生懸命考えて作ったような話。水に性的興奮を感じる人がいるのかは正直分からないが、「正常な人」の理解可能・受容可能な範疇に落とし込むことの暴力性にも目を向ける必要があるので>>続きを読む