貧困と高利貸しとに閉じ込められた女は格子の外の学生に恋するも叶わずに雁のように舞い戻る。
売春防止法による置屋の最後の一日までの走馬灯は蛍の光と一人の娼婦の毒死で終りを告げる。
勤続表彰の金一封や娘が愛する人はおろか家まで失いそうな家族はけれどもけなげで泣き笑いそして歌う。
大だなの放蕩息子と駄菓子屋の才覚娘の地震に始まるかけおちは共白髪を予感させるゆっくりと降る雪に濡れる。
離婚し六人もの子を引き取るも病死あり障害あり反抗がありつつ成長があり帰宅後は子に囲まれる。
父のせい母のため進学を諦めた丁稚奉公は名まで奪われたがどんな環境にも魂までは奪われず。
愛する男が死んだ失意のなかで女は愛のない結婚をするもそれは過ちで男は生きていて愛も生きていた。
女との約束を果たせなかった男は二度もの事故で身心とも喪失しかけるも他者の妻となった女の執念で過去が目覚める。
弁護士がなぜか探偵のようで被害者にも加害者にも惚れられるが秘書のおにぎりがお気に入りで最後はアクション。
見放された廊下の子も見捨てられた悪童も優等生もみな一人の教諭に育まれて卒業式を終えて手をつなぐ。
殺したはずの女とやりなおそうと再出発するも手を伸ばすとオパールの手に拒絶されてやりなおせない。
汚された姉は純粋な男を愛すもそれは純粋な妹の男であり二人に捨てられる姉は純白のジャンパーへと抱きつく。
婚約者と義母と旦那と妹分とを失っても東京からの旅人を恋するも恋は愛にはならずに芸者は三味線を弾く。
妻のある東京人が刹那的に訪れた温泉町で見たひたむきに生きる女たちの純粋を冷たい雪の上の雪晒しに重ねる。
戦時中の子どもは無力で手紙一枚落としてしまえば頼るは他者の善意のみで彫った兎と遥々旅する。
人の心よりも命よりも重要な新車の機密を暴き暴かれることを放棄した次期課長は黒い販売車とすれ違う。
踊りの師匠は砥いた針で人を消す裏稼業で自分が消されそうになった恨みは晴らすが報酬の鍵は捨てる。
小料理屋の亭主は針の一刺しで人を消す殺し屋の裏稼業で女房も子分も持たず信じず墓場を去る。
田舎の小悪党が女と組んで野良犬と大悪党をユスるも小悪党は悪党になりきれずカネを棄て敵を討つ。
銀行員の支店長代理は妻と部下との関係を知らぬ顔でピッケルを磨きつつ鹿島槍ヶ岳での遭難の計画を練る。
男に娘を奪われそうになった遊郭の女将は高みから恋を語りその下には恋さえできない遊女が「あとからあとからなんぼでもてきてくんねんなあ」。
ひとのみちを外れた女が身を任せたのはけものばかりの欲まみれの屋敷で最後は裸でそのみちを去る。
日陰者の女が簪を風呂に落としたことから日向にいる男と出会いともに一本橋を渡りつつ日向を知る。
賢兄愚弟の弟が父の逮捕で叔父宅へ預けられるも悪戯三昧で帰されて父の容疑も晴れて相撲をとる。