髙橋佑弥さんの映画レビュー・感想・評価

髙橋佑弥

髙橋佑弥

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ペーパーチェイス(1973年製作の映画)

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法科大学院青春群像。全篇"水平方向"の映画…徒歩徒歩徒歩!講義室と図書室と自習室が尺の8割を占めていて、否が応にも大学生活を思い出す。夜間図書室侵入や安ホテル缶詰試験勉強…ロマンある。勉学一筋単調生活>>続きを読む

ザ・ペーパー(1994年製作の映画)

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キートン&ロバーズ出演(共演場面はナシ)…『スポットライト』と『大統領の陰謀』を中間で緩やかに繋ぐブン屋映画で悪くはないが、時限緊迫優先で新聞記者映画としては案外薄味な気も。全体的に展開が荒い。ただや>>続きを読む

どろ犬(1964年製作の映画)

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夜道でヘッドライトに照らされる白コート女……な冒頭、『キッスで殺せ』が一瞬脳裏を過るが、いやはや車が背後から女をゆるりゆるりと追っていて……「乗せて行こうか」。寧ろキャサリン・ジョーンズ事件=『ゾディ>>続きを読む

結婚のすべて(1958年製作の映画)

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哲学科講師(職位は何だっけ)について「先生も結婚してなきゃ、とっくに博士論文通ってる」と陰で吐き捨てるのが最前列熱心学徒なのも笑えるし、インテリかと思えば突き詰めれば結局ただのヤリ目的軽薄ペテン口先野>>続きを読む

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

3.0

惨憺たる出来だった初監督作『モリーズ・ゲーム』ゆえ「監督仕事に期待は禁物」と決めてかかっていたが、これは十分イイ"2本目"水準。かなり饒舌過剰なきらいはあるが、脚本と役者のアンサンブルに注力しきる判断>>続きを読む

続警察日記(1955年製作の映画)

3.0

前奥右左と複数人が忙しなく出入り/移動/喋り行動する引き画で捉えられた空間が◎…撮監姫田真佐久、わりと初期の仕事。薄紙貼付自家製曇りガラス(?)の外で揺らめく草木の影。『フライングコップ 知能指数0分>>続きを読む

晩菊(1954年製作の映画)

4.0

上映時間=クダ巻き時間。全編、銭金について。金貸しと債務者だけの不幸世界。相変わらず、繋ぎの超絶シームレス。細川&望月宅の二部屋と玄関の結合部である細い柱付近を周遊する小泉博がいい。傑作。『驟雨』も出>>続きを読む

カツベン!(2019年製作の映画)

2.0

昨年出た活弁史本を読み始めたので遅ればせながら見たが、公開時の好評多しな印象が霧散。幼少期は長くてタルく、全編も長くてタルい。クドすぎる反復展開、弛みきった下腹の如く締まりのない終盤の騒動/追跡に閉口>>続きを読む

不安が不安(1975年製作の映画)

4.0

すれ違う男と女が同時に互いを振り返る。マルギット・カルステンセンとクルト・ラープ…まるで"狂人"=能力者であるかのように、互いを察知し、共鳴する。泣く。(最終的に女は快方へ向かい、社会復帰に踏み出すの>>続きを読む

結晶の構造(1969年製作の映画)

4.0

クソ傑作。自由闊達、躍動感溢れるアドリブ的な遊戯シーンの多幸感と徐々に明らかになる思惑、関係性の微細な変化、静寂、顔と顔、視線と視線の緊迫。車がやってきて始まった物語は、車が去りゆくことで終わる。一抹>>続きを読む

太陽の年(1984年製作の映画)

3.5

<男と女と病床の母>…母を持つ人物の性別が入れ替わって『コンスタンス』と鏡写しの人物配置。『コンスタンス』が上下/昇降/落下/宙吊りの映画だとすれば、こちらは乗り物による垂直移動の映画。列車走行場面で>>続きを読む

視覚障害(1986年製作の映画)

4.0

視覚障害と全く関係のない数少ないシーン、教頭室で少年が家庭不和の悩みを吐露する…という素晴らしいシーンがあって、それだけで今年ベスト。ドワネルの告白シーン、『イカとクジラ』カウンセラーとの会話に匹敵。>>続きを読む

ザ・コップ(1987年製作の映画)

4.5

原作はエルロイ『血まみれの月』。蹴り破れない一枚目、開けば猟奇死体の二枚目…という冒頭に始まる"扉"の映画。前景/後景の情報処理がスマート。数度ある発泡場面は、終幕に近づくほど右肩上がりに冴え渡る。">>続きを読む

あらくれ(1957年製作の映画)

4.0

やばいわ。男運女運が最悪な、やたら仕事が出来る高峰が、男と職場を巡りに巡り、働きに働くも、いつも何らかの障害にあい困窮→死ぬほど働いて立て直す→また障害にあい…の繰り返し、夫は不貞を働くorダラダラす>>続きを読む

わが幼少時代のポルト(2001年製作の映画)

5.0

"映画"という媒体の複合構造と共鳴する"記憶"の重層構造。要素のツギハギで完成する映画という虚構への賛歌。場所を媒介に記憶が立ち現れ、過去記録と過去再現、過去作…と混濁するレイヤー。劇伴と声。自伝映画>>続きを読む

博奕打ち 総長賭博(1968年製作の映画)

4.0

傑作。どいつもこいつも情緒不安定な気分屋たちが早とちりに早とちり、犬死に無駄死に死屍累々。泣く。

2018/12/02 (過去感想サルベージ)

花札渡世(1967年製作の映画)

5.0

花札ノワール。素晴らしい白黒撮影。ファム・ファタル鰐淵晴子に惚れる。梅宮辰夫が闇夜で多勢と斬り合う終盤のクライマックスも凄すぎる。刃が交わり火花が散る。振り向かずに腕をぶん回し、背後の敵が死ぬ。ラスト>>続きを読む

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)

4.0

念願叶ってやっと。劇場で、しかも夜に初見を迎えることができたのは圧倒的に正しい。眠れぬ者たち、居場所がない夜の人々の映画。そしてアテのない"移動"と"横顔"の映画。走る車、徒歩、そして横移動撮影。素晴>>続きを読む

風の向こうへ(2018年製作の映画)

2.0

"存在意義"の為だけにベールを脱がされた幻の遺作。どれだけウェルズの構想が反映できているのかは知らないが。凡ゆる映像素材のパッチワークによる混沌。明らかにウェルズの分身な老監督役ヒューストンと、ボグダ>>続きを読む

幽霊と未亡人(1947年製作の映画)

5.0

恥ずかしながら初見。前にBlu-ray買って見ずに棚で眠ってた。オールタイムベスト級。めちゃくちゃ泣ける。船長幽霊初登場カットがやばい。眠るジーン・ティアニーから始まり…時計…窓…とパンしていって人影>>続きを読む

白銀のレーサー(1969年製作の映画)

3.5

恐怖映画もかくやという爆速緊迫滑降場面&もどかしいほど進展なき"生活"部の停滞感…の反復で紡がれるスキーヤー人生。幾度も執拗に描かれる転倒事故に寒気。クロスフェードの卓越。成長なき主人公。異様な終幕も>>続きを読む

オール・ザ・キングスメン(1949年製作の映画)

3.0

再見。昔に"お勉強"で見たきりだったが久々に。普通に面白かったのだが…知事の息子も秘書も、今のぼくにはニコラス・レイ世界の住人にしか見えん…

2020/11/19

拳銃王(1950年製作の映画)

4.5

たまげる。ひたすら厳格で堅牢。無敵の早撃ちが導入部のほか一度も引き金を引かない…最高峰の西部劇。予断を許さぬなかの痛切な諦観。喪の帰郷。重い覚悟/決断と秤にかけられるのが、屑青年の軽率/卑怯なのは、こ>>続きを読む

殺人容疑者(1952年製作の映画)

3.5

指紋鑑定は当然として、煙草吸口の唾液を解析して血液型を特定、枕カバーに付着した脂と毛髪から年齢は勿論、使用しているポマードまで推測、箪笥に付着した繊維も分析…とやたら過剰に丁寧な捜査手順描写のフェティ>>続きを読む

草の葉(2018年製作の映画)

4.0

傑作。向かい合う"否定"の映画。「あんたが悪い」「ウチには泊めない」「共同執筆はしない」…etc。何度も繰り返される否定。言葉だけではなく、合わぬ焦点、映らぬ顔、シルエット…による会話相手の存在の否定>>続きを読む

川沿いのホテル(2018年製作の映画)

4.0

窓際映画。外部への興味の映画。カササギの鳴声、雪、外で父を探す息子の声、会話相手の肩越しに見える窓外で会話中の人影。そして繰り返し。「美しい」「どうも」etc。監督"不倫後"要素、自己憐憫&批判も。「>>続きを読む

デジタル・スーパースター列伝 闇の世界の超人たち(2011年製作の映画)

4.5

「そっちの世界では有名」な名誉なき偉人…もとい異人、立ちんぼ事情に精通した電話マニア「ミスターPBX」&ファイル共有マニア「阿井さん(仮名)」。羨ましくないアンダーグラウンドの世界。「新しい方へ常に向>>続きを読む

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

2.0

アルトマンの中では相当落ちる。

2018/08/01 (過去感想サルベージ)

エンターテインメント(原題)(2015年製作の映画)

4.0

巡業中年禿芸人、虚無不感症的煉獄旅。意図的に額に撫で付けたバーコード髪、不愉快で退屈なギャグ、スベると客に食ってかかる。伏線もなく、オチもなく、緩急もない。しかしアルヴァーソンに限っては「いかに面白く>>続きを読む

つかのまの愛人(2017年製作の映画)

4.0

近年のガレルでベスト。ベルタ神。顔から顔へと移りゆく、縦横のパン!画面の左半分を占有するルイーズ・シュヴィロットのクローズアップ。画面開幕早々立ったまま!中盤も立ったまま!そして終盤も立ったまま!最高>>続きを読む

ジャックポット(1974年製作の映画)

4.5

全てが最高だが、グウェン・ウェルズが何より最高。マジで『ギャンブラー』と並ぶくらい好き。

2018/08/28 (過去感想サルベージ)

幻の女(1944年製作の映画)

4.5

超久々に見ているが、やはり素晴らしい。エラ・レインズの役柄の、原作からの立場改変がイイ。原作では主人公の愛人だが、映画版では主人公に想いを寄せる秘書で、献身の美しさが際立つ。「彼のために戦わなくては。>>続きを読む

リチャード・リンクレイター 職業:映画監督(2016年製作の映画)

3.5

面白い。この手のドキュメンタリーは業績賛美になることが決定付けられていて、御多分に洩れず本作もそうなのだが、見終えて記憶に残るのは彼の"偉大な業績"ではない。まだ何者でもなかったころの、毎日の日記。「>>続きを読む

非情都市(1960年製作の映画)

4.5

腰が抜けるほどの傑作。ブン屋ノワール。一匹狼新聞記者がグレーゾーンに足を踏み込み、手段を選ばず特ダネを追う。自社すらもが記事を妨害。成されぬ正義、苦い敗走。かつての反骨記者が理想を諦め酒浸りな暗黒世界>>続きを読む

悪の階段(1965年製作の映画)

4.0

和製金庫破り映画の傑作!暗黒映画職人としての鈴木英夫、この高打率よ…。燃えるバーナー、滝のような汗、焼き切れる三重扉の金庫と轟音…地に足がついた緻密な描写蓄積の妙。そして"お預け期間"による仲間割れ。>>続きを読む

四月の永い夢(2017年製作の映画)

3.0

これは『過去を逃れて』…出来はさておき。

2018/06/17 (過去感想サルベージ)