いくらなんでも石原さとみの泣き顔に頼りすぎだろとは思うが、あいかわらず人の気持ちをエグるのがうまい。
絵が飛び抜けてよく、しかしその他がついていっていない。
映画的な誇張と細部のバランスが繊細な作品。これを「コンセプトさえ知っていれば観る必要はない」などといってるひとは映画を評する資格がない。
ちょっとありえないくらいストーリーとキャラクターが破綻しているし、それを強引に乗りこなすほどには役者にも演出にも力が入っていない。ダメな時の白和。
寓話性が強すぎてもともと設定に整合が取れていなかった話を変に現実的に回収しようとしたせいで目にも当てられないことになっている。そして、そうした無理をはねつけられるほど「いま」が楽しくない。
軽薄であるが雑ではない、下ネタはあるが下品ではない。最高のロマコメ。
救いきれないものを徹底して救いきれないのがよい
やはり会話。このくらいのちょうどいい映画を作り続けてもらいたい監督ではあるけれど、環境がそうさせてくれなさそう。
こんなとっ散らかった要素をよくミステリを軸にまとめたな、という手腕はさすがの大倉崇裕。
映像も話もたいしたことはないのだけれど、演出に一貫性があるとそれだけでうれしくなる。
子ども向けアートアニメのダルさからわずかに逃れられている幸福な映画