xoさんの映画レビュー・感想・評価

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ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.5

デヴィッド・フィンチャーらしい美学が貫かれた作品。洗練されたエンタメ。主人公さながらストイックに、無駄な贅肉を落としたあとにある美しさが魅力的。

他作でもそうだけど、計算された繊細な演出や描写による
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十二人の怒れる男(1957年製作の映画)

3.3

密室劇のお手本のような作品。劇的、スリリングな展開が用意されているわけじゃないのに引き込まれる。
緩急の付け方がうまい。本筋とは直接関係のない、休憩中の何気ない会話だったり、人柄が見える言動だったりが
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ウィッカーマン(1973年製作の映画)

2.3

行方不明の少女を追って島にやってきた主人公を通して、住民たちの奇妙な様子が活写されている。ドキュメンタリーのようなアプローチを交えつつ、異教的な儀式や風習、生活習慣が詳細に描写されていて、リアリティを>>続きを読む

ドニー・ダーコ(2001年製作の映画)

3.3

これが「難解」扱いされるのがよくわからない。一度ですべてを理解しようと、答えを見つけようとするからでしかないと思う。スムーズに見させてくれないってだけで、作品自体の手触りは易しいし、物語も作劇もわかり>>続きを読む

ローラ殺人事件(1944年製作の映画)

3.5

どんなだったか忘れてしまったものの、見た記録として。。
フィルム・ノワールの古典のうちのひとつ。よくできた1時間半のミステリー、ファムファタール。美しく謎めいた女性を中心に振り回される男たち。テンポ良
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悪魔の追跡(1975年製作の映画)

3.8

軽い気持ちで見始めたら思いがけず引き込まれる、面白い作品だった。いわゆる「ホラー映画」らしくはないし、「B級」とも思わない。インディ作品らしい風合いではあるものの、チープさが前に出てもいないし、"可愛>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.5

映画のさまざまな面白さに満ちた傑作。細部までデザインされた音や画面、複雑で深みある人物造形、普遍的なテーマ、共感できるヒューマンドラマ、緊張感あるサスペンス、劇的な展開。数々のメタファー、重層的・多様>>続きを読む

ザ・レイド(2011年製作の映画)

3.8

アクションを見せることに特化した作りながら、人間ドラマにはしっかり強度があるし、各所でのスリルの高め方がお見事。どこかで見たような、クリシェ的表現に頼らず、オリジナルな工夫が見られる描写が多い。それゆ>>続きを読む

未来の想い出 Last Christmas(1992年製作の映画)

3.3

奇妙な作りの作品ではあるものの、最終的には普遍的にグッとくるメッセージとともに、爽快感・満足感をもって見終えられてしまう。終盤には森田監督にしては異例なスペクタクル展開も。

必要性をさして感じられな
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.0

特に映画好きじゃない人になにか一作勧めるとしたら最適な作品だと思う。笑えて泣ける秀作。間口は広く、終盤にいくほど深みがある。

作品中心にあるのは物語というより、二人の付かず離れずな関係性の醸し出す空
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セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

2.5

思っていたよりもアダルトショップは関係ない。悩める少女が葛藤しつつも内的に成長する話、ではあるのだが、あらすじやアートワークのイメージからするとずっと地味。ポップさはない。
主人公少女と風変わりな大人
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ボーダーライン(2015年製作の映画)

3.3

ヴィルヌーヴ特有の美学が全編に通底していて、冒頭数分から、静的ながら緊張感あふれる画作りに引き込まれる。

アートとエンタメのバランスがとても巧み。視覚、音響的な快楽、きっちり面白い物語、複雑でもあり
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猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

1.4

こりゃ大人が見るものじゃないなと思った。。リブート3部作をSFアドベンチャー調で再構成したような内容。猿が主役で人間を相対化して描くというアイディア、対立と融和、権力と腐敗といったテーマ、届けられる教>>続きを読む

No.10(2021年製作の映画)

2.0

どこかにとどまったり予想の範囲に収まろうとせず、物語は常に動き続けているため退屈はしない。ここからどう展開していくんだろう?、これはなんだろう?、がひたすら続く。

ただ実際のところ、見終えた後に手に
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ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

2.5

ブロックバスター大作として文句なし。日頃観に行っているタイプの映画ではまず見かけない、子どもたちが楽しそうにしていたのが見れたのが良かった。

VFXを最大限使い、怪獣たちをいかに迫力あるよう見せるか
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世界の終わりから(2023年製作の映画)

2.8

力作と呼ぶに相応しい作品。監督の気合いが大いに伝わってくるし、伝えたいメッセージは明確。理屈を抜きにしたって、つい感情を持っていかれそうになるくらいのパワフルなエモさがある。

突っ込みどころを挙げだ
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異人たち(2023年製作の映画)

2.0

喪失感を抱えた主人公の心のリハビリを見守る105分。喪の作業(グリーフワーク)をひたすら描いている。結構特殊な作品ではある。

なにせ物語はないに等しい。あらすじに書いてあることがすべてというか。。
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ミッシング(2024年製作の映画)

3.5

とても吉田恵輔監督らしい作品。今回も、人と人との心の距離をめぐる話。物理的に近いほど憎しみが湧き、離れるほど愛が育つ。そうした中で主人公がどうにか現実との”折り合い”をつけようと踠き続ける。

娘の失
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.8

池袋グラシネIMAXの最終日に駆けつけ鑑賞。確かにこれは「体験」だった。これまでに映画館で感じたことのないスペクタクル。大迫力の映像、地響きする重低音。あれをまた浴びに行きたい。。

とにかく世界観の
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プリシラ(2023年製作の映画)

1.8

富と孤独というソフィア・コッポラらしい題材を扱いながら、彼女の諸作と比べると複雑さや繊細さを欠いている印象。
物語やメッセージは彼女史上もっとも明快。ただ話運びは上手くない。淡々と事象を並べていくだけ
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ピカドン(1979年製作の映画)

3.0

当時、これが地上波テレビの朝のワイドショー内で流れていたというのは驚き。

原爆にしろホロコーストにしろ、理屈をいくらこねても伝わらない恐ろしさや惨たらしさというのもあって、そういうときこそ、メディア
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.3

恋愛映画でありながら、恋愛についての映画とも言えるし、それ以上を描いてもいる。
共感したり考えさせられたり、見終えてから人と語りたくなる。その意味でかなり開かれた作品だと思う。人それぞれの恋愛観や経験
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.5

史劇・伝記映画としてよく出来ている。ヒューマンドラマ的に盛り上げようとしない抑制の効いた作劇ながら、画面ごとシーンごとの情報量が多く濃密だし重厚。ノーランらしい演出の切れ味、テンポの良さもあって、時間>>続きを読む

その場所に女ありて(1962年製作の映画)

3.3

1962年製作というのが信じがたいくらい、今の社会にも通ずる視点がある。主人公を中心に群像劇的に物語は展開し、周りの男や女のありようを映し出していく。情感を込めないドライなタッチで、男性の横暴さや女性>>続きを読む

地獄の逃避行(1973年製作の映画)

3.5

若者の普遍的な感情を描いた映画。基本的に彼にも彼女にも共感はできないものの、最終的には切ない気持ちにさせられてしまう。経験というよりその感情に共感できるというか。 物語後半になり、破滅が見えていくとと>>続きを読む

東京五人男(1945年製作の映画)

2.3

「サザエさん」っぽいなって思った。目線が庶民にあって、能天気といっていいくらいの牧歌性に満ちた喜劇。貧乏で何もない暮らしでありながら、悲哀は一切なく、全編にわたってコメディ。

後半になるほどドタバタ
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シャドー・メーカーズ(1989年製作の映画)

2.8

1989年のオッペンハイマー。ノーラン版を見るにあたっての有用な補助線にはなった。

史劇、伝記映画、群像劇調のヒューマンドラマといった要素が混在していて、物語としてはあまり引き締まっていない印象。
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関心領域(2023年製作の映画)

3.0

アウシュヴィッツの隣で暮らす収容所長とその家族の話。
描かれるものよりも描かれていないものに想いを馳せさせる作劇手法は新鮮。遠景に映るものや遠くで鳴っている音が物語の文脈を作っていくため、映画館で見な
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ヨーヨー(1965年製作の映画)

2.5

軽快なタッチ、コメディ調の娯楽作品でありながら、けっしてハートウォーミングではない。作品背景には過酷な社会状況が感じられるし、芸事をとりまく外部環境の変化、新たな表現形式との対峙、家族関係での葛藤によ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

2.8

結局のところ2回も観たものの、最初の印象が良くなるでも悪くなるでもなく。。
様々な考察を見聞きしたうえで、背景に宗教的な寓意があることは踏まえて見たとしたって、やっぱり理屈では説明がつかない場面が多す
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パレード(2024年製作の映画)

2.0

ドラマシリーズにしたほうがよかったのでは? 物語が性急だし強引だしで、ダイジェスト的に切り張りしたような印象。表層的、記号的な描写の数々。キャラクターに命を感じられないし、2時間超でこれだけのことをや>>続きを読む

ミス・アメリカーナ(2020年製作の映画)

3.8

テイラー・スウィフトの数年間を追ったドキュメンタリー。彼女の個人的な経験や葛藤が、心情や考えに変化をもたらすとともに、作品・活動にも反映されてきていることがよく理解できる。しっかりと物語性があって楽し>>続きを読む

宮松と山下(2022年製作の映画)

2.8

冒頭の屋根瓦のショットに始まり、不穏な演出によって画面に緊張感が漂っていて引き込まれる。エキストラ役者として、タクシー運転手としての具体的な”舞台裏”の描写がリアリスティックで良かった。

説明的でも
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アフター・アワーズ(1985年製作の映画)

3.8

次から次へと、何ひとつ解決しないまま新たなトラブルが起きては主人公が対処しようと奮闘し続ける97分間。様々な事案が並行しつつ、物語は途絶えることなく連綿と続いていく。見終えて何か残るわけではないものの>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

2.0

吸血鬼といえどホラー映画ではない。次に何が起こるのか、の興味を推進力に静かな緊張感で物語は進行していく。
心象風景や、夢と現実とが入り交じるヴィジョンが表現されている。全般的に影を利用したショットが美
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

新鮮な映画体験だった。対立する陣営による言葉の応酬、その勢いにどんどん飲み込まれていく感覚。まさに法廷の傍聴席にいる気分で、次々繰り出される事実や意見に対して、納得したり心の中で反論したり感情を動かさ>>続きを読む

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