誰にも語らない真実に耳を傾けすぎて、雄弁に見えてくる自然の不穏さ。予告編がカバーしている前半部分が全てだった。
いつ・どこにいても同じ檻の中にいる感じ息苦しかった。安らげるあのプールでさえ日が差さない心象風景。「ここから出して!」と叫びたくなった。
こんなにも色とりどりの人たちが、同じ工程を繰り返して同じ形の服を作っていき、同じお札の束を手にして一喜一憂させられる光景のグロテスクさ。地元を出て広い世界につながったようで、また一つ大きい檻のなかに入>>続きを読む
男(=国)が女(=町)を奪いあってケンカするバカバカしさを反復するとこで、戦争の愚かさを描いているのだと思った。彼らの向かう「栄光」がみるみるうちに霞んでいくさまは悲しくも痛快だった。
「男性映画の>>続きを読む
「大砲の街」
大砲がほぼ終始画面右を向き「敵」が不鮮明で、それを一介の労働者家族から出来事を"遠くから"眼差すという構造ゆえの不穏さが豊かで短編として強度があった。
1本目の壮大さからの2本目の滑稽>>続きを読む
原子からエネルギーを取り出すことが世界を滅ぼす爆発を生むことと、恋人への後悔の後得た愛によって社会における自分の立場を取り戻すこと。そういうミクロからマクロへの連鎖が彼の人生だった。
トリニティ実験>>続きを読む
映画としてのつくりと撮り方はラブストーリーの教科書に忠実なまま見易く、大事なところは現代らしく研ぎ澄まされていて良かった。会おうと思えばすぐに会えちゃう感じとか。
いまの自分はありえたかもしれないい>>続きを読む
暗闇のなか顔と手元だけを照らす手作りランプの灯りがそのまま映画的だった。ノーカット掘削ありがたい。
ハリウッド並みのエンタメに興奮しながら見てて、終わり方でそういえばフランス映画だったなとなる。
ニノンとルイーズ、別々の居心地悪さから"逃げる"2人とはパラレルに、不確かなものを探す"鬼"のイダのおかげでかなり見ごたえがあった。ストーリーだけでなく、画面レベルで繰り広げられる付かず離れずのダンス>>続きを読む
終末感ある日常を描き続けてきた浅野いにおがついに描いたホンモノの終末。終わってしまえばいいと思う日常の終わってほしくない瞬間が、本当に終わってしまいそうな世界のなかで輝いていた。自分が死ぬ怖さを押しの>>続きを読む
こんなに受け身な主人公。かといってモテるわけでもない。あとから特別な季節だったのに気づくの、意外とありふれた青春かもしれない。
人間が死に向かうとき、「熟す」のか「腐る」のか。老いることで増す芳醇な香りと死に近づいている不穏な臭さ、言語化しなければどちらかわからないものが嗅覚を刺激し、泣きそうにはなるけど別の怖さで引き戻される>>続きを読む
大げさで感情的な演技を排して、つねにキャラクターから距離をとったナラティブに徹している印象。SFだけどアクロバティックな映像表現も控えめでフィジカルなリアリティを大事にしてるのも良い。
ハッピー・エ>>続きを読む
人を愛することと罪を憎むことの間で揺れる複雑さがそのまま画面に出てた。"推していた私"と"被害者"、どちらも傷つけないように慎重に選ばれていく言葉はほんとうのことを語ってくれている気がした。
問題の>>続きを読む
『虎に翼』で『光る君へ』じゃん!
吉田喜重の『エロス+虐殺』と比べると個別な感情より社会をまなざした感じ。テレビドラマ発の企画として丸くなった感じだけど、『エロス+虐殺』では描かれなかった史実のやる>>続きを読む
ビヨンビヨンって音楽(ジャウハープ?)がなければいつもの青山真治らしいソリッドな映画になってたんだろうけど、石田えりのあの感じを軸に置くためには間違った演出ではないと思った。
『Helpless』『>>続きを読む
ストーリーの人情大切にする東野圭吾的な面白さはそのまま、そこに内在するホラーの要素を映画の技で拡げた感じ。
予想より法廷に閉じこもってたけど思っていなかった方向に転がるので飽きずに楽しめた。妻が英語とフランス語を使い分ける演出が良かった。
定点で演奏を撮りつづけてたまにカメラが変な動きする面白さが、だんだんわかってくる。
"恋愛"に対する考え方(結婚とか不倫とかまわりのこととの距離感含めて)が自分とまったく同じでスカッとした。
みんなが見てないペラペラなもの(落ち葉とか雑誌の記事)を大事にすることで巡り合うっていう">>続きを読む
手紙をひっくり返すことで"信じさせる"くだり好きだった。演技は舞台の上でのみすることではなくて、他人を憑依させる才能でもない。だからといって誰にでもできるわけではなく、思ってないことも思わせる手仕事の>>続きを読む
フィルムがすべてを憶えている(かもしれない)こと。それを信じすぎないのがさすが巨匠。
意外とシンプルでとっつきやすいストーリー。でもダサいことはしないし、ショットはさすがの強さ(とくに劇中劇のフィル>>続きを読む
この社会が「かけがえのない人間の集まり」であることが正しいこととされる一方で、「誰が抜けても大丈夫なようにそれが構築されるべき」でもあるとされる矛盾にずっと疑問を浮かべていた。そして自分は後者の物言い>>続きを読む
"Fin"マークがサゲになってて本当に最初から最後まで面白い。ちょっとでもしみじみさせてもらおうとか、人生の教訓を得ようとか思ってると目覚ましビンタ食らわされる。でも結局人間は好きになる。
もっとも個人的なことがもっとも政治的なことであるのが、沖縄を舞台にすることによって前面に出てた。
それが熱さなのか冷たさなのかわからなくなるほどとにかく肌に刺さる橋本愛の演技が、彼女の語る愛そのものみたいだった。
ペンションを改築した家とか、森の陽射しといった"あたたかい"ものの前でそれが繰り広>>続きを読む
美術が凝っていて、話も成長譚としてわかりやすくて、ふつうに面白い映画だった。それはフェミニズムが内面化できてればの話かもしれないけど。
「あまり話せなくてごめんなさい。疲れてて」(みたいなセリフ)ここの演出の豊かさよ。
そのセリフで示されるような、映されるひとときひとときよりも膨大で緩慢な時間を彼女たちは過ごしている。その広がりがた>>続きを読む
序盤に多く見られるフィックスの構図の計算高さより、終盤の森でのシーケンスで発揮されるフレーミングとモンタージュのサスペンスの方を、映画の芸術性と呼びたい。
過去も今もタナトスの影がつきまとう若くない二人だからこそ際立つエロス。この時期のフランス映画っぽい軽さのなかにそういう重厚なものを帯びているバランスが良かった。
名前を呼ぶことで存在を認めることになるのが良かった。そこに呼ばれる本人がいないところも。
途中まで主人公がMtFなのかFtMなのか、全然わからないで見てた。芸術家母親のポリティカルなコレクトネスにボ>>続きを読む
触れられる家族がいることだけが"ほんとうのこと"。クリエイター讃歌かと思いきや、より普遍的な人間讃歌を見せつけられた。
勝手にふるえてろで松岡茉優を好きになった私が、彼女の芝居を久々に良いなと思った>>続きを読む
冒頭が長く連れ添った夫婦のケンカで始まるのめっちゃ効いてるなー。そのあと2人が体験する濃密な感情が弛緩してほどけてしまった先と対比させることで、刹那に閉じ込めておく美しさが際立つ。
「そういえばあそ>>続きを読む
セザンヌの絵画観にかんするディアローグは刺激的で感銘を受けたが、宗教的なドラマの部分の意味がまったくわからん!詳しい方おせーて。
ルックが似てるかどうかじゃなくて、実写で撮る演出まで見えたうえでキャスティングしてるの伝わってきて良かった。山田杏奈の表情良すぎな。良い映画かどうかはさておき"漫画好きが楽しめそうな演出"でみんな満足>>続きを読む
ヤクザたちのカラオケ普通に笑った。
ちょっと接する分にはコミカルだし包容力あるけど、やっぱ怖い世界だよねって思わせるヤクザ描写と綾野剛の演技とても良かった。
ラストのカラオケシーン、一生に1テイクし>>続きを読む