Kogarathさんの映画レビュー・感想・評価

Kogarath

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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.9

地味だけど面白い。
改題のくだりとか選考会とか、ギャングを装って映画監督と会う場面なんてずっと笑いながら観てた。
ジェフリー・ライト演じる、インテリでちょっと嫌味な主人公もとてもいい。

表面上は差別
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異人たち(2023年製作の映画)

3.9

山田太一の原作から、舞台設定や主人公のセクシュアリティをがらっと変更。
監督のパーソナルな体験と重ねるためらしいけど、それによって物語の重要な要素である"どうしようもない孤独感"がより補強されている感
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

忘れ得ぬ人とのifに思いを馳せつつ、お互いがそれぞれの人生の中で選択を重ねた結果としての"現在"にも敬意を。

メインの2人も良いんだけど、それ以上に夫アーサーが好きになった。
柔らかな雰囲気と「わざ
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.3

公私ともに多忙で睡眠不足が続く時期に公開されたが、これだけは劇場で観ねば!とあらゆる眠気対策を講じて臨んだものの撃沈。
前半の寄り道だらけの会話シーンの連続にしっかりウトウトしてしまった。(エリセ作品
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.4

特別親しい関係じゃない、たまたま同僚になったような人を気にかけて、その人の苦しみを想像して寄り添うなんてなかなか難しい。
そんな関係性のひとつの理想形を、あくまでも自然に提示してくれるような優しい映画
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.1

法廷劇の形式を借りた濃厚な人間ドラマ。
不審死をめぐるサスペンスを観ていたはずが、いつのまにか「マリッジストーリー」ばりの離婚調停劇を観ているような気分になってくる。喧嘩の録音を法定で再生される場面の
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バービー(2023年製作の映画)

3.8

バービー人形には何の思い入れもないけどちゃんと楽しめた。
軽い気持ちで観られるポップさもあり、現実のジェンダー問題などをデフォルメして織り込み問題提起する社会派な側面もあって、バランスよくまとまってた
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

ファンタジックでどこか歪な舞台や衣装、エマ・ストーンの熱演に目を奪われっぱなし。魚眼レンズの多用など凝ったカメラワークも、この世界観ならアリだなと思わせてくれる。とにかく映像を観ているだけで楽しい。>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

3.7

ある青年を迎え入れることで家庭が崩壊していくスリラー。
『saltburn』もそうだけど、絶対にバリー・コーガンを家に入れてはいけない。

究極の選択を前に右往左往する家族。
一番まともそうに見えるニ
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ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

4.4

こんなにクオリティ高い実写化ある?
原作が好きなので映画化が発表された時はどうなるもんかとヒヤヒヤしていたけど、蓋を開けてみればここまでやってくれるの!?という驚きの連続。
隅々から伝わる原作への愛情
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お茶漬の味(1952年製作の映画)

4.2

佐分利信演じる茂吉がとても魅力的。
「戸田家の兄妹」の頃よりぐっと貫禄が出て、演技に渋みが増している。大事な時に旅行で不在の妻に「君らしくていい」と言える懐の深さ。朴訥でありながらパチンコと孤独につい
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.6

ただ相手を信じて待つ。
映画館でアンサが現れるのを待つ。ホラッパから連絡が来るのを待つ。
カウリスマキ監督は、わざわざメモを失くさせたり、事故に遭わせたりして、ひたすら待たせる。
コスパ/タイパを重視
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真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.3

設定や人物の佇まい、車のカッコ良さなんかは思いっきりハードボイルドなのに、いつものユーモアと優しさが光っていて、カウリスマキの映画だなあと嬉しくなる。
女性警官と出会って一緒に行動するまでのロマンスが
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ほつれる(2023年製作の映画)

4.0

共感はできないしこんな経験したこともないけど、なんとなく分かるかも…と思わせられる絶妙にリアルな空気感。
夫婦仲は冷え切ってるんだけど、すぐ別れたいわけではない。煮え切らず、観ていてずっと居心地が悪い
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CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

3.8

とても繊細な作品。
新たな環境に置かれたことで変わっていく人間関係についての戸惑いを、13歳の視点から丁寧に、彼らと一緒に悩むように見せていく。
そっと見守るように観ていたら、中盤に待ち受ける出来事が
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フィンガーネイルズ(2023年製作の映画)

3.5

「林檎とポラロイド」が素晴らしかったクリストス・ニク監督の新作が、Apple TV+で静かに配信されているではないか。
それも主演がジェシー・バックリー&リズ・アーメッドという旬ぶり。誰か教えてよ!
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パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー(2023年製作の映画)

3.8

4歳の娘の映画館デビューに。
TVシリーズや劇場版前作は家で何度も何度も見(させられ)ていたので、予習はバッチリ。
子供向けではあるけど大人が観ても退屈しないし、CGアニメーションのクオリティの高さに
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.3

金持ちの牛からミルクを盗んでドーナツ作って稼ぐという設定がまず面白い。
すぐバレそうなほどよい緊張感と、ベタベタせず繊細に形成されていく温かな友情が心地よかった。歴史には残らないけど、確かにあったかも
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Saltburn(2023年製作の映画)

4.5

傑作「プロミシング・ヤング・ウーマン」で鮮烈なデビューを飾ったエメラルド・フェネル監督の新作は、濃さ120%のバリー・コーガン劇場だった。
前半こそBLOC PARTYやMGMTが流れるあの頃のキラキ
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.1

『X エックス』の前日譚。
前作と繋がってはいるんだけど、ガラッと作風を変えて単体としても成立しているのが良い。
今回はクラシカルな演出で、スターを夢見る田舎娘の物語を見せてくれる…んだけど、やはり不
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.4

繰り返す日常に疲れた男が、その日常の尊さを知っていく…みたいな話と思ったら、主人公は初めからそれを知っていた。
丁寧に仕事をこなし、銭湯で汗を流し、馴染みの店で飲んで帰り、本を読んで寝る。
地に足がつ
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.8

着想を得たという「バルタザールどこへ行く」は観ていてツラい映画だったけど、こちらもなかなか。
動物愛護活動がかえって動物から幸せを遠ざけていく皮肉や、理不尽な暴力を通して、ロバの目から見た人間の愚かし
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パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

4.0

初めて観たんだけど既視感のある、どっからどう切り取ってもカウリスマキ。作風はこの頃から確立していたのね。

不愛想だけど愛らしい市井の人々の描写と、のんびりしているようで急に行動的になるリズムのつけ方
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.9

子供の頃によく乗った寝台列車そっくりで、それだけでたまらなくノスタルジックな気分になる。
よくこんな車両残ってたなあ。あちらでは現役なんだろうか。

観ながらフィンランドとロシアの歴史的関係ってどうな
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劇場版 きのう何食べた?(2021年製作の映画)

3.6

ドラマ版と変わらないほっこりした空気が流れていて、料理も相変わらず美味しそう。
映画というよりTVドラマの延長といった感じで、ちょっと物足りなさはある。かといって、この作品で大事件とか起きられても困る
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

4.1

フィンチャーが肩の力を抜いてさらっと作ってしまった感じの作品。(実際はそんなことないんだろうけど)
地味なのにずっと面白くて、飽きずに観ていられる編集の上手さは流石。
あれだけ時間をかけて待ち伏せして
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.1

スピルバーグの自伝的映画と聞いて想像するような映画製作ストーリーではなく、そこに至るまでの家族のエピソードを丁寧に描くビターなヒューマンドラマ。
取り扱う「映画」そのものについても、エキサイティングな
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.3

ひたすら移動と夜営を繰り返すロードムービー。
歩けども歩けども何もない荒野ばかり。疲弊していく登場人物たちとシンクロするように、観ているこちらもしっかり疲れることができる。

古典的な西部劇のヒーロー
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

3.8

「リバー・オブ・グラス」を思わせる、町から出られないロードムービー。
万引きなど自業自得な部分もあるとはいえ、次々と不運に見舞われ行き詰っていくウェンディの姿は痛々しい。誰か助けてあげてと言いたくなる
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.2

すっかり生き方が違ってしまった旧友2人が秘湯を目指すロードムービー。
少々ぎこちない彼らの会話から滲みだす鬱屈、やるせなさ…そういった感情をカーラジオや、温かみとうら寂しさが同居するヨラテンゴの音楽が
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セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

3.8

モンゴルと聞くとどうしても草原や遊牧民が思い浮かんでしまうだけに、こうやって都市部の人々の生活を垣間見れるのは嬉しい。
そこで両親に逆らわず大学に通い、ローカルなインディーロックを聴く女の子。彼女が成
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ドキュメント サニーデイ・サービス(2023年製作の映画)

3.9

大好きなバンドの初ドキュメンタリー。
カンパニー松尾氏による距離感の近いショットがラフな編集で繋がれていく。ライブの場面は熱量が伝わってくるようだ。

初期の頃の話はネットや書籍である程度知ってはいた
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オズの魔法使(1939年製作の映画)

3.7

言わずと知れた名作。
子供の頃に観たかったなあと思いつつ、大人になった今観ても楽しめる。扉を開けるとカラフルな世界が待っている場面、これから冒険が始まるワクワク感に満ちていて最高だ。そして"Over
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ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994年製作の映画)

2.8

いかにも90年代サブカルって感じの忙しない編集、強すぎる照明、すぐ斜めになる撮影、やたらスローとモノクロを使う演出…と、今観るとかなりキツい。当時は最先端だったのかしら。
タランティーノが原案だけじゃ
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.3

「アイリッシュマン」に続き、驚異の3時間半!
確かに長くは感じるものの、しっかり緩急がつけられ間延びした印象はない。全くダレることなく最後まで釘付けだった。
何よりスコセッシ映画でデニーロとディカプリ
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激突!(1971年製作の映画)

3.8

スピルバーグの原点。
めちゃくちゃシンプルだけど楽しい。
運転手の顔が見えないからこそ倍増する恐怖。
あれだけ「FLAMMABLE」と見せておきながら爆発も炎上もしないのは驚いた。その分、虚しさと「ま
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